
制約があるからこそのやりがい。
デザインされた動物病院。
一般の住宅と異なり、動物病院という決まった用途空間の設計においては、さまざまな設計上の制約があります。「制約があるからこそ、アイデアが出せる」という水石さん。水石さんが一体どのような工夫をして居心地のいい空間を設計しているのか、お聞きしました。
手探りしながら確立したプランニング方法
動物たちはデリケートなので、なるべく刺激しないようにプライベートな環境を作らなければなりません。どんな動物かによっても対応は異なります。
また、診察室だけでなく、手術室、X線室、トリミング室など小部屋が多いのも動物病院の特徴です。室内が汚れない工夫や、飼い主さんと病院スタッフの動きがクロスしない動線づくりも必要になります。そして、開業する動物病院はテナントが多いため、狭い空間の中でこうしたニーズをどう実現するかが設計のポイントになります。テナントは最初から大きさや形が決まっており、いびつな形状も少なくないのです。
「動物病院ならではの制約はたくさんあり、最初は戸惑いました。でも、一定の設計パターンがあることが分かり、それからは自分なりのプランニング方法で設計できるようになりました。」
いくつもの動物病院を設計する中で、水石さんの中にオリジナルの方法論が確立していきます。
ポイントは回遊性と、内観⇄外観の連続性
次に、水石さんは外観のデザインにこだわり、内観と外観の連続性を大事にします。
「病院のファサード(正面入口)を、看板を貼付けたようなデザインにはしたくないんです。内装専門の設計者ではないゆえの発想かもしれません。」
通常の建築設計は建物の内側から考えていくのが基本で、まず室内の設計デザインをし、それによって外観もつくられていきます。ここで、水石さんは、内観と外観を「つなげる」デザインを考えます。
たとえばある病院では、木のデッキ材を何枚もつないで作った壁が、病院内にある待合い室から病院外の駐車場までずらりと続いています。うねりのあるデザインで壁の連続性が強調されており、遠くからでも一目で存在が分かるほど。まるでレストランかカフェかと思うようなスタイリッシュさで、動物病院のイメージを一新するデザインに驚きます。
また、あるテナント内の病院では、本物の木の壁がガラスの入口ドアをはさんで、角度をずらしながら奥までずっと続いています。
「新規開業の場合などは、目立って周知性を高めることも大事なんです。でもテナントだと間口が狭くて目立ちにくいことも多く、病院内部の様子も見えづらい。そこで、ファサードにひと工夫して、人の目線が入口から病院の奥まで届くような設計を意識しています。また、無機質な本体の建物に暖かみのある木のファサードをつくることで、道行く人の視線を内部に引き込んでくれると思います。」
狭小住宅の設計経験を生かしたデザイン
一般住宅の設計としては、水石さんはいわゆる狭小住宅の設計を多く手掛けてきました。事務所の壁にはさまざまな家のポートフォリオが並んでいます。三角形の土地など、建築には不向きと思われる土地に建てられた家も多いのですが、室内空間は実に豊かで広々。お施主様はみな「ここにこんな家が建つとは思わなかった」と驚くといいます。
一見不利に見える条件でも、アイデアを出して最善のものをつくる。ここに水石さんの設計の素晴らしさがあるといえるでしょう。
地域のコミュニティスペースのような動物病院を目指して
「病院に併設して、飼い主さん同士が集まれるようなスペースを作りたいですね。「外待合い」や「ペットカフェ」のような。地域のペット好きの方がコミュニケーションを取る場を敷地内につくってみたいです。また、夜には地域住民の明かりとなり、自然に人が集まるシンボル的な存在にもなって欲しいです。」
動物病院をペットが病気になったときだけに行く場所ではなく、普段から地域住民が気軽に集まれる場所にしたい、そう語ってくれました。水石さんは実際に、ドッグランがある病院の設計も経験しています。新しい動物病院の形が実現する日も、そう遠くないかもしれません。
基本データ
| 所在地 | 神奈川県 |
|---|---|
| 家族構成 | 夫婦 |
| 施主 | 動物病院 |
設計者情報
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