
“視線をコントロールする壁”が創り出す
すべての場所で違う景色を楽しめる空間
くじゅう連山の景観を
存分に楽しめる空間に
同社は個人の住宅や店舗をおもに手がけているが、今回の依頼は企業所有の大型保養所だ。お施主様からの要望は少なく、部屋数の確保や外壁に赤茶のレンガタイルを使用すること、トレーニングルームの設置くらい。基本的にプラン構成や外観デザインはお任せだった。
さっそく現地調査を実施した吉田さんは、基本的なコンセプトがすぐに固まったそうだ。
「とてもすばらしい景観を、最大限に楽しめる空間にしたいと考えました。眼下に由布院の街が見え、くじゅう連山や由布岳を望むことができる立地を活かすことが一番重要だと感じたのです」。
そこでまず、景観をもっとも楽しめる方向を調べた。その結果、敷地の中で45度の斜めに建物を建てることにした。正面の眼下に由布院の街が見え、由布岳も見ることができるからだ。
さらに、ある仕掛けを組み込んだ。建物を横長に配置し、保養所を訪れた人が、車寄せに到着した時点では景色が見えないようにしたのだ。その意図を、吉田さんはこう解説してくれた。
「室内から見える景色を、到着した時点で想像できないようにしたかったのです。車寄せに到着した時点では景色が想像できず、建物の中に入って進んでいくと、突然すばらしい景観が目に飛び込む。そこで驚き、感動する体験をしていただくことで、保養所としての価値も高まるのではないかと考えました」。
ぜひ、写真と説明文もご参照いただきたい。車寄せや玄関へのアプローチでは、たしかに景色がまったく見えない。その後に突然すばらしい景観が見えると、まちがいなく感動することだろう。
こうして“景観を最大限に楽しむ”というコンセプトが固まった。
場所によって見え方が変わる
室内からも景観を楽しむ工夫
最大の特徴は、場所によって景色の見え方が変化することだ。
その意図を、吉田さんはこう語ってくれた。
「横に長い建物ですので、何もしなければどの場所にいても同じ景色を見ることになります。高台の上にあり、視界を遮るものがないパノラマの景観。それをただ眺めるだけではもったいないと感じたのです。室内の場所を移動すると、違う景色が見える。その感動や驚きも提供したいと考えました」。
そこで吉田さんが考えたのが、“視線をコントロールする壁”の採用だ。
室内の各エリアから巨大な壁を突き出すことで、景色が切り取られる。まるで額縁越しに、あるいはスクリーンで景観を見ているように感じるのだ。
先述した玄関へのアプローチでは景色が見えないが、室内で90度曲がると縦長のピクチャーウィンドウから細長く切り取られた景色が目に飛び込む。左右の視界は狭く、期待が高まる。さらにLDKへ進むと、由布岳を含む壮大なパノラマビューを楽しむことができる。また、客室からは由布院の街を眺めることができる。
この壁はそれぞれの場所で、最適な景観を楽しめるように建物から張り出す長さが変えられている。たとえば浴室の壁は長く飛び出しているため、壁が適度な目隠しとなる。このため視線を気にせず、景色を満喫しながら温泉を楽しむことができるのだ。
この壁にはもう一つ、隠された工夫がある。落ち着いた色のレンガが使われた壁は、そのまま室内まで続いている。そのため、壁に誘われて視線を外に誘導する効果が。さらに、室内と眼前の大自然との一体感を得ることができるのだ。
こうして、到着した時から室内で過ごす、すべての時間で“景観を最大限に楽しむ”ことができる保養所が誕生した。
重視しているのは周辺環境との
関係性と、コストコントロール
普段は日本各地で個人の住宅や店舗を手がけているが、常に心がけていることが2つあるという。
1点目は、その土地や周辺環境との関係性を重視するということだ。その土地の歴史や周辺環境の成り立ちは、すべて異なる。周辺環境を考えずに家を建てると、浮いた存在になり、近隣住民との交流がスムーズにいかないケースも発生する。だからこそ、周囲との調和を考えながらお施主さまの要望を実現するそうだ。
今回の保養所の外観も、その一例だ。外壁が連なる外観は、周囲の山並みに呼応し、調和している。違和感がなく、むしろこの景観に合うデザインだ。
2点目は、コストコントロールだという。実は設計事務所に建築を依頼すると、お施主様の代理者となって工事監理を実施できる。そのため、品質とコストをトータルで担保できる。さらに、コスト面で厳しければ設計で対応することが可能だ。その結果、設計事務所に依頼する費用は、その他の場合とあまり変わらないという。
今回の保養所も、コストをかなり削減している。たとえば目に見えない部分や重要ではない部分に既製品を使ったり、コストが安くなる設計をしているそうだ。メリハリや優先順位をつけて、コストコントロールをしている一例だろう。
お施主様からお任せで依頼されることも多いという吉田さん。さいごに、安心してお任せできる仕組みがあるというので、ご紹介したい。
吉田さんは依頼があるとまず、お施主様に10枚にわたるアンケートを記入してもらうそうだ。どのような生活をしていて、どのような好みなのか。こうした感覚や感性の部分を知るためだ。服の好みなど細かな点まで聞くことで、感性の面でのすれ違いを防いでいるという。
その土地の特徴を活かした家を建てたい方や、周囲と調和した家を建てたい方。あるいはできるだけコスト面での相談をしたい方は、いちどコンタクトを取ってみてはいかがだろう。
基本データ
| 作品名 | 湯布高原のVILLA |
|---|---|
| 所在地 | 大分県由布市 |
| 敷地面積 | 2928.79㎡ |
| 延床面積 | 484.23㎡ |
| 間取り | 5LDK+インナーガレージ+外風呂 |
撮影:Yousuke Harigane
設計者情報
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