
「花火が見える家で、薪ストーブのある暮らしを楽しみたい」
その要望を叶える提案で、高評価を得た作品
家から花火を見て楽しみたい!
まずは、最適な土地探しから
杜設計は地域の設計事務所・工務店として家づくりを手掛けており、グループ企業と連携して土地探しから施工、外構、さらには家具の製作まで一貫して手掛けている。なぜ、設計事務所がそこまでやるのか。その理由を、代表の山本さんはこう語ってくれた。
「根本にあるのは、“家に愛着を持っていただきたい”という想いです。本来、設計事務所は家の設計監理をするのが仕事です。しかし、それだけではお施主様の要望を完全に満たすことができないケースもあるのです」。
「今回の作品も、お施主様から“家の中から地元の花火を見て楽しみたい”という要望がありました。しかし、この要望を建物だけで満たすことは困難です。予算内で花火がよく見える土地が見つからなければ、花火が小さく見えたとしても満足できるものにはなりません」。
実際に、この作品は家づくり窓口からの紹介がきっかけだったという。花火を楽しむことができる土地探しから関与でき、薪ストーブなどのこだわりにも対応できる設計事務所として、杜設計に白羽の矢が当たったのだ。
この作品のように花火を見たいというある意味特殊な要望でなくても、視線や日当たりを気にする人は多い。自社で設計から施工まで関与できれば、高品質な家を建てることができる。後回しになりがちな外構も一体的にデザインできれば、敷地全体の使い方を無駄なく考え、視線等もカットしながら自然をより身近に感じることができる。
このようにお施主様へのメリットを考えているうちに、現在は杜ハウスという、杜設計が手掛けている住宅ブランドを立ち上げ、自社グループですべてを手掛ける体制が出来上がった。
家の設計だけでなく、お施主様が完成後にその家へ住み続け、満足した生活を送ることができる。そこまで考えて、体制を作っている設計事務所はあまりない。お施主様にとって、このような体制がある設計事務所は、とても心強い存在ではないだろうか。
敷地内で一番花火が楽しめる場所はどこか?
薪ストーブを最大活用できるプランは何か?
お施主様の主な要望は、
・室内から花火を楽しむことができること
・薪ストーブがある暮らしを楽しみたいこと
だった。
山本さんはまず、敷地内で花火を見るのに一番良い場所を探すことから始めた。花火は敷地の南側に打ち上げられる。敷地の南側には飲食店の駐車場があり、しばらくの間は問題がないが、将来的に家が建つ可能性もある。実際に、お施主様と一緒に敷地で花火大会を鑑賞して、どこに花火があがるのかも現地で確認した。
そこで考えたのが、花火を家のソトでもウチでも楽しめるように、建物は北側に寄せながら南に大きな開口部を設置する案だった。
また、薪ストーブはとても熱量が大きいため、壁やドアで小さな空間に仕切ってしまうと暑くなりすぎる可能性がある。そこで家全体を、まるでワンルームのような大きな空間とすることにした。
リビングの上部は吹き抜けとし、南側のハイサイドライトと呼ぶには大きすぎるほどの窓に沿って、花火鑑賞用のキャットウォーク(渡り廊下)を配置した。
こうして花火を特等席で楽しむことができ、薪ストーブひとつで家全体を暖かくすることができる基本プランが完成した。2つの要望を同時に解決するプランだ。
この作品には、通常は玄関ホールとリビングを仕切るドアがない。ワンルームのような空間にしながら、薪ストーブで家全体を暖かくすることができるためである。これは冬、帰宅したときに玄関ドアをあければホールが暖かく、家族の気配が感じられるのでお施主様から大好評だという。
また花火観賞用のキャットウォークを設置することで、家全体がつながる回遊動線となった。キャットウォークはすのこ状になっており、真下が暗くなることもない。家の中に、遊び心がある最高の場所ができて、こちらもお施主様はとても満足しているそうだ。
その他にも、この作品の各所には考えつくされた工夫が散りばめられている。ぜひ写真の説明文をご参照いただきたい。
お施主様本人が、自分で切った南三陸杉を使用
地元の素材を活用し、愛着が湧く家とは?
杜ハウスでは、地元の素材を活用することを心がけているという。特に南三陸杉を多用し、この作品でも構造材の90%以上は、南三陸杉を使っている。
さらに驚くのは、伐採シーズンとタイミングがあえば、お施主様が自分で南三陸杉を切る「伐採式」を実施していることだ。この作品でもリビングの柱や梁に、お施主様が現地に赴き、切り出した南三陸杉が使われている。
自分が切り出した南三陸杉が、リビングの中央に見える柱として使われている。自宅の柱を、自分で切る。そのような経験がある方は、ほとんどいない。お施主様にとっては、とても思い出に残り、いつまでも自宅に愛着が湧くのではないだろうか。
薪ストーブでの周囲に使われている断熱用の石も、地元産。秋保石という、耐久性、耐火性、吸湿性に優れ、昔は学校の校舎や蔵などにも使われた仙台の名石だ。
このように地元の素材を多用する理由を、山本さんは次のように語ってくれた。
「理由の一つは、経済面です。たとえば大きなハウスメーカーさんが輸入木材を使っても、地元の経済にはあまり関係がありません。地元の企業と協力し、地元の材料を使えば、家づくりを通して地域経済に還元することができます」。
「もう一つは、愛着が湧くということです。お施主様が切った木材が、柱になる。その時の思い出や経験が、住み始めてからもずっと蘇るのです。そのため、伐採式に参加したお施主様からはとても高い評価をいただいています」。
この作品は、“令和6年度みやぎ木造住宅コンクール”で最優秀賞を受賞している。
宮城木造住宅組合が主催し、県産材をおおむね50%以上使用した木造住宅であることなどの応募条件があるものだ。90%以上の県産材を使用したこの作品は応募条件をはるかに上回り、さらにプランの完成度で極めて高い評価を受けた。
土地探しから関与し、要望を満たすプランを提示し、施工に責任を持つ設計事務所に依頼して、長年愛着を持つことができる家ができれば理想だろう。そのような建築家をお探しの方は、いちどコンタクトしてみることをお勧めしたい。
撮影者:越後谷 出
基本データ
| 作品名 | 薪ストーブのある、花火が見える港町の家 |
|---|---|
| 所在地 | 宮城県塩竃市 |
| 敷地面積 | 195.8㎡ |
| 延床面積 | 112.61㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
設計者情報
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