
余す余地なし。
利回りと満足度を兼ね備えた集合住宅。
必要なものは優先順位、不利な敷地条件の中での最適解。
※奈須野さんのインタビュー記事はこちら
旗竿地とは土地の形状が旗のような形になっている区画のことであり、都心に近い場所では目にすることが多い。玄関の位置が固定されてしまい日当たりを確保しづらい、道路から奥まった場所に建つため防犯面において不安が残るなどというデメリットが一般的に言われるがそれだけに、比較的安く購入することが可能だという面もある。
一般的な敷地と比べると不利な点があることはもちろんだが、収益を生むためにはしっかりとターゲットを定め、競合である集合住宅を押しのけ、住まい手に選んでもらわなくてはならない。それも、料金を低く設定することなく。
前提条件として、間取りはワンルーム。住まい手のターゲットは、都心で働くが家賃相場などの関係から都心に住むことができない新社会人の男性という事に絞っていった。都心に住むことが収入的に難しいという層をターゲットに据えたとはいえ、利回りを生むためには賃料は相場よりは高めに設定しなくてはいけない。ターゲットは都心で住むほどの収入はないものの、きちんと家にこだわりを持つ人だと設定した。
限られた旗竿地にて、最大限の利回りを生むため、建築家 奈須野さんの設計が始まった。
初期投資のコストはカットするが粗悪なものは作らない。住む人にとっても良い住環境になるように、奈須野さんの設計には余念がない。住む方に満足してもらう事が長い目で考えると、よい利を生むと考える奈須野さんは、コストを下げるべき所は下げながら定めたターゲットが注視するであろう点には、しっかりとコストを割く。
例えば、旗竿敷地では、その土地の特徴から重機が入れにくいということがあり、工事費がかさんでしまう事がよくある。それも今回の要望は敷地をめいっぱい使うという事もあり、建築をするための作業スペースがなくなってしまう。作業性の悪化は、そのまま施工費の増加にも繋がる。
奈須野さんは作業がしにくい合板ではなく、筋交いを使うことなどによってそのリスクを回避している。一方でターゲットを掘り下げて行く中で、玄関のオートロックの設置は行っている。家にこだわりを持つ人に選んでもらうための戦略からコストの優先順位を付けていった。
利回りと、満足度。2つの線が交わる点が設計の糸口。
3階建てのこちらの長屋は1階には2部屋、2階、3階には3部屋の部屋数が設けられており3階にはロフトが付いている。各部屋にはしっかりと明かりが行き届くよう天窓を設置して明るさと広さを感じさせるようにしている。調光スイッチを採用することによって照明の明るさも変えられるため、部屋の雰囲気を演出することも出来る。
2,3階へと繋がる階段を利用し収納部分を儲けているため、一人暮らしの方にとっては他の物件に比べてかなり多くの荷物を収納する空間がある。
床材などにも奈須野さんのこだわりが見て取れる。直に触れる事が多く、実は住環境の満足度に結びつきやすい床はクッションフロアなどの安いものを使うのではなく、板張りにしている。
3階に行くための螺旋階段は特別感を演出しており。玄関前には姿見が備え付けられていることも、新人の男性社員には嬉しい点かもしれない。クロスなども部分的にアクセントを付けることによって飽きが来ないデザインにしつらえた。
こうして、敷地を目一杯使い利回りを意識しながらも、安っぽさや妥協を感じさせない長屋が完成した。将来に胸を膨らませながら上京し、新しい生活の場にこの長屋を選んだ住まい手には、いつかこの長屋をでていく日まで、天窓から明るい光が差し込むだろう。
基本データ
| 家族構成 | 夫婦 |
|---|---|
| 施主 | 集合住宅 |
設計者情報
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