
居場所が違えば何度でも感動!
一面の海と熱海を楽しみ尽くす
海に正対せず傾ける、熱海のさまざまな表情を楽しむ
家を建てるにあたって、もっとも大切にしたのは、熱海らしさを実感できる空間にすること。ご夫妻は東京にも自宅マンションを保有していて、熱海と東京の2拠点を使い分けての生活となる。そのため熱海の家では、都内では味わえないゆったりと豊かな時間を過ごしたいという希望があった。
また、大学教授という仕事柄、ご夫妻のもとには学生をはじめ国内外からの来客が多い。そこで、お客様をお迎えするおもてなしの場としてこの家を活用したいという思いもあった。
設計をおこなった川口孝男建築設計事務所の川口さんは、目の前に海が広がる絶好のロケーションを、いかに家のつくりに生かすかを考えた。メインフロアである2階に、この家の中心となる約30畳の大広間を配置。ここで普通なら、広間全体を大きな空間にして、全面に広がる海を見えるようにするかもしれないが、川口さんはあえて西側のリビングエリア、東側のダイニングエリアに分けて、中央で微妙に部屋に角度をもたせた。
「熱海の風景の美しさは、海だけではありません。わずかに窓の向きを変えることで、リビングからは青く広がる海が、ダイニングからは相模湾とそれに続く山や街並みまで見渡せるようにしました。吹き抜けの窓、3階の和室の窓からも、またそれぞれ違った景色が見えます。一つの家でも過ごす場所によって、熱海のさまざまな表情を楽しめるので、飽きることがなく、オーナー様にもたいへん喜ばれています」と川口さん。
広いLDKは、客人をもてなす社交の場であると同時に、普段はご夫婦二人で生活する場でもある。そこでリビングは吹き抜けで開放感をもたせる一方、ダイニングは天井を低くして落ち着ける雰囲気に。また、ソファコーナーや読書コーナーなどを設けることで空間にリズムをつけ、それぞれの場所での居心地のよさをつくりだした。
ご夫妻は当初、南欧風の家をイメージしていたそうだが、川口さんは「具体的すぎる要素は、長い時間の中でいずれ色あせてしまう。オーナー様が考える南欧風とは何かをじっくりと私自身の中で翻訳し、ナチュラルで光があふれる居心地いい空間として、この家のデザインをご提案しました」という。言葉どおり、内・外観ともに特徴的な装飾はほとんどなく、素材や仕上げもすっきりとシンプルだ。それがかえって空や海の青、山々の緑と見事に調和して、この家を魅力なものにしている。
家が建って8年が経つが、「不満な点は一つもない」とご夫妻。住民票も熱海に移し、週の半分以上はこの家から大学へ通っている。東京から新幹線で約1時間。ここに帰れば、都会では味わえない豊かな時間が待っている。
大小異質な空間の組み合わせがストーリーを生む
吹き抜けに面してつくられたソファコーナーや、その上の中2階にあたる読書コーナーは、あえて天井高や奥行きを抑え、広間とは対象的なボリュームに。その小じんまりとした空間が、まるで隠れ家にいるような安心感を与えてくれる。この読書コーナーのちょうど正面の高さに、吹き抜けの窓があり、一服の絵画のように切りとられた海が見える。
また、客間として使われる3階の和室も、孤立した部屋にならないよう、引き戸を引きこめば吹き抜けへ開放できるようにした。そのため、どのフロアにいても、お互いの気配を感じていられる。そのほかにも、天井まで本棚をつくりつけた1階の書室や、フロアごとに雰囲気の違うテラス、植物好きのご夫妻のためにキッチン横につくりつけた温室など、大小の個性的なスペースがこの家に多彩な表情をもたせている。
「いい家にはストーリーがある」と川口さん。そこに住む人の豊かな暮らしをイメージして、シナリオを書くように設計された家には、飽きの来ない居心地のよさが生まれる。
【川口 孝男さん コメント】
私にとって「良い建築」とは、そこに居るだけで、少し豊かな気持ちになれる場所です。建築家が自分のデザインを押し付けるのではなく、あくまでそこに暮らすことになるオーナー様が主役。ですから緊密なコミュニケーションが何より大事だと思っています。オーナーご夫妻ははっきりしたライフスタイルをお持ちで、またとても柔軟にこちらの提案も受け入れてくださったので、創造的で楽しい仕事となりました。
【夫婦】
夫婦二人で生活しているときと、お客様をお迎えするとき、そのどちらも考慮して丁寧に設計してくださったので、常に快適に心地よく暮らすことができています。ときにはゼミの学生を30人近く招待することも。ここへ来ると誰もが自分のお気に入りの場所を見つけて、それぞれの時間を自由に楽しんでくれるので、招く側としてもとてもうれしいですね。
基本データ
| 所在地 | 静岡県 |
|---|---|
| 家族構成 | 夫婦 |
| 施主 | X邸 |
設計者情報
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