
密集地の課題を解決!
ユニークなV字天井の賃貸戸建て住宅!?
固定概念をくつがえす『V字天井』
採光と開放感に一役買っているのが、2階のV字天井。家の中心へと下がる片流れ屋根が2つ合わさったユニークな家の形を生かし、天井がV字になっているのだ。
V字の屋根は外に向かって上がるため壁も高め。その高い壁を利用して大きな窓を効果的に配置し、明るく開放的な室内を実現している。目線も屋根に沿って斜め上へと向かい、隣と交わらない。
さらに、V字天井は空間のゆるやかな仕切りにもなっている。
「2つの個室は子ども部屋を想定しています。扉の上部は空けて、LDKと天井でつながりを持たせました。2階が一体となりつつも、V字の谷の部分で緩やかに分かれる設計です。適度な距離感を保ちながら、家族を近くに感じられる生活をイメージしました」
これなら個室の扉を閉じ切っても、上部の空きによって屋根全体が見渡せて開放感を損なわない。もちろん、子ども部屋としてのプライベート空間もきちんと守られている。
一方で、山崎さんは素材にもこだわった。
「黒いガルバニウム鋼板の外壁は手間が掛かりますが、住宅街に印象的なシーンをつくれたらと思い採用しました。造り付けの家具や床はロシアンバーチの合板です。フローリングは一般のものよりも幅広に切り、白めのウレタン塗装をしています」
合板の切り口は色合いの違う層が見え、白色系にまとめられた室内で良いアクセントとなっている。木の風合いを生かしなめらかに仕上げた幅広フローリングは、部屋を広く見せる効果もあるようだ。
賃貸の一戸建てという概念からは想像もできない、個性的かつ快適な物件。借り手に豊かな暮らしを与えてくれるだろう。
『良質な賃貸戸建て』を選ぶ時代に
「形も大きも違う敷地に応じた家づくり、いわばクライアントのいない注文住宅みたいなものです。その分、見学に来たお客様が暮らしをイメージできるよう心がけました。各戸のLDKに配置した収納付きのベンチはその一例ですね」
確かに、ガランとした部屋より棚や収納があるほうが、その家で過ごす家族や自身を想像でき、持ち込んだものを配置する際の糸口にもなるだろう。
「どのタイプも間取りはこのエリアでニーズの多い3LDK。コストを考えて素材の仕様は同じです。ただし、建物の形や中の造りは棟ごとにガラッと変えて、それぞれ個性のある家にしました。ご家族の生活スタイルや予算で選べるし、賃貸とはいえ住む家に愛着を持ってもらいたいので」
広々としたシューズインクローゼットなどの収納・照明・エアコンは、全棟充実している。賃貸の戸建てでは珍しいケースだが、これなら賃貸物件のために新たに買い足す必要がない。入居後すぐにいつも通りの暮らしをスタートできる。
「現在の戸建ての賃貸物件は、古いものや新築でも量産型のありきたりなものが主流です。借り手の方も『生活の機能が果たせればいいか』という妥協的な考えが根強く残っています。とはいえ短くない期間暮らすのですから、僕のつくった家が『住空間』を考えるきっかけになればうれしいですね。空間的にも性能的にも良質な賃貸物件なら『住み続けたい』と思ってもらえる。引っ越さなければならない場合でも、『次も良い物件に住みたい』という『住意識』の向上につながるのではないかと思うんです」
家族が暮らし、帰る場所…まさに生活の主軸と言える家。しかし、今まで戸建ての賃貸に多く求めないのが当たり前だった。このプロジェクトが大きく花開いた時、賃貸・新築にかかわらず良質な住空間を選ぶのは当たり前という時代が来るかもしれない。
基本データ
| 所在地 | 埼玉県蕨市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 104.90㎡ |
| 延床面積 | 96.31㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
撮影:繁田諭
設計者情報
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