
憩いの時間を豊かにする空間と洗練デザイン
人が集まり笑顔が満ちる「人生を楽しむ家」
来客が多い暮らしを豊かにする、
人と人が心地よくつながる住まい
Kさまは海外で生まれ育ち、10代までを過ごした方。幼少期の海外生活ではいつもたくさんの人がKさまの家を訪れ、住まいは生活の場であると同時に、出会いと交流、発見や創造を生む大切な空間だったという。
時が経ち、大人になって家庭をもったKさまの家には、子どもの頃と同じように多くの人が訪れる。
Kさまはクリエイティブな世界でキャリアを積んで起業、料理家の奥さまは自宅で料理教室を主宰し、日頃から仕事関係の方や生徒さんなど来訪者は多数。多いときには週の半分以上もゲストを招いて食事を楽しむ。
そんなKさまが自邸に望んでいたのは「人生の大半がバカンスとなるような居心地のよさ」「訪れる全ての人が心地よくつながる家」。この思いを形にしたのは、MON architectsの水間寿明さん。水間さんは住宅、オフィス、商業施設などを幅広く手がけ、洗練されたデザインと、要望に柔軟に対応してくれる高い設計力で多くの支持を集めている建築家だ。
完成した『501.Residence』は1階がKさまのワークスペースと家族の個室、2階がLDK+バルコニー+水まわり、屋上にルーフバルコニーという2階建て。
特徴はなんといっても、一般の住宅に比べてパブリックな性格が色濃いことだろう。Kさまご一家はもちろん、ゲストも楽しく心地よく過ごせる空間の魅力を詳しくご紹介していこう。
敷地の制約を逆手に取った、
心を弾ませる外観デザイン
そうなるとファサードにもこだわりたいが、『501.Residence』は北の前面道路からの間口が狭い旗竿地というハードルがあった。つまり、道路から見えるのは全体のほんの一部になる。
水間さんは、ともすればネガティブに思えるこの条件を逆手に取り、魅力的なファサードをつくっている。
まず、旗竿の竿の部分は駐車場とアプローチとし、その途中に門扉を設置。アプローチより一段高い敷地に立つ建物のうち、道路から見える部分の1階に木製引き戸、2階に大きなガラス窓を同じサイズで配置した。
おかげで道路から見る『501.Residence』は、重厚な木で閉じた印象の1階と、邸内が見える開放的な2階のコントラストが際立つモダンなファサードとなった。しかも、道路から奥まった立地や門扉で高級感が増し、敷居が高いけれど入ってみたいと思わせる隠れ家レストランのようである。
敷地条件を逆手に取ったデザインでいうと、屋根も見逃せない。
『501.Residence』は旗竿地という条件のほかに、法規上の厳しい斜線制限があった。だが、制限に沿って斜めの屋根をかけるとのっぺりした平面が建物を覆い、シャープな雰囲気が削がれてしまう。
そこで水間さんは、平らな屋根と傾斜する屋根を上手に組み合わせて、洗練された外観デザインを実現。道路に面した北側から見る屋根はすっきりとミニマムで、法規の制約をクリアするためとは思えないシャープな仕上がりとなっている。
工夫を凝らした屋根は、反対の南面のデザインも秀逸だ。
南側から見た建物の頂部には、南に向かってスコーンと開き、東西北の3方向を壁で覆われたルーフバルコニーがある。だが実は、これらの壁は屋根の一部。それぞれの方角に勾配がついているため、ルーフバルコニーは斜めにせり上がる壁に囲われているかのよう。道路側とはまた違う立体感、個性あふれるモダンなデザインが印象的だ。
この独創的なフォルムはデザイン面の魅力だけでなく、屋根の一部をルーフバルコニーの視線除けの壁に生かすという、実用面のメリットを含んでいるところがすごい。邸内においても、北と西の傾斜屋根の下が細いL字の吹抜け風の高天井になっていて、ここに仕込まれたトップライトや通風窓がLDKに光や風を届ける役割を果たしている。
「外観デザインはかなり試行錯誤しました」と水間さんはいうが、制約をデザインや住み心地のメリットに変換する発想・スキルは感動もの。規制の多い都市部でも、水間さんがパートナーならこんなに素敵な建築ができるのだ。
生活の場がおもてなしの舞台になる
開放的なモダン空間
まず、門扉の先の木製引き戸。開けたら邸内かと思いきや、現れるのはゆったりとした玄関ポーチ。正面のガラス越しに見える階段の建築美も素晴らしく、現代アートの美術館に来たかのよう。気持ちが一気に上がる特別感たっぷりのプロローグだ。
玄関ポーチのガラスドアから邸内に入ると、Kさまのワークスペースを見通せる広い玄関ホール。ここから階段をのぼると、道路から見えていた2階のガラス張りのロフトスペース。ロフトは道行く人の目に入るディスプレースペースとして計画され、この家のパブリックな性格が強く表れている。
その先に広がる天井の高い開放的なLDKも、パブリックな空間の1つだ。漆喰の壁や天井、一枚板でつくった大きなダイニングテーブル、限定品のYチェアなど、本物志向の内装とモダンな家具がしっくり馴染み、誰もが心地よくくつろげる。
何より、LDKは南のバルコニーとひと続きで、抜群の開放感。南の隣地は某企業の施設が建つ予定の空き地だが、水間さんは、施設が建っても『501.Residence』から見えるのは植栽であることを確認済み。光と風を感じるLDKやバルコニーも、近隣の花火大会のときは特等席になる爽快なルーフバルコニーも、人目を気にせずのびのびと使える。
水間さん設計のキッチンも、ゲストとの時間を華やかに彩るスポットだ。奥さまの料理教室に適した対面式のアイランドタイプを含む2列のカウンターを設け、充実設備を使いやすく配置。パントリーなどは見えない場所にあり、キッチンは生活感のない洗練された空間となっている。
こうして見ていくと『501.Residence』は、個室を除く全空間が、人が集まるパブリックな場としてつくられていることに気づく。
もちろんそれは「ゲストが心地よく過ごせる」というKさまの思いを水間さんがしっかり具現化した結果だが、こんな風に、普段の生活スペースが客間として映える住まいはなかなかお目にかかれない。『501.Residence』は、家族が心地よく美しく暮らせるように計画された住宅は、「人が来る」と気負わなくても立派なおもてなしの舞台になることを教えてくれる。
間取り図
基本データ
| 作品名 | 501.Residence |
|---|---|
| 所在地 | 東京都 |
| 敷地面積 | 142.78㎡ |
| 延床面積 | 142.81㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども1人 |
| 施主 | K邸 |
撮影:髙橋菜生(Nao Takahashi)
設計者情報
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