
オーナーの思いを唯一無二の魅力として表現
自然と家族が集まるリビングを内包する家
シンプル故に洗練された佇まい。
小さなキューブを組み合わせた真四角の家
施主であるKさまは、お子さまの小学校入学に間に合うように自宅を新築したいと考えていた。山口さんに設計を依頼することに決めたのは、かねてより同じ地域団体に所属し、山口さんが団体のために製作したチラシなどのデザインを好ましく思っていたからだという。
この家の魅力の1つ、シンプルなフォルムは、Kさまの「いわゆる『家』の形ではない建物にしたい」という要望に応えたものだ。単純に屋根の形をフラットにすれば叶えられるかもしれないが、屋根の形をフラットにデザインしたからこその、このフォルムだという表現を突き詰めたという。試行錯誤を重ねたのちに提案したのが、いくつかの小さなキューブが組み合わさり、ひとつの大きなキューブのように見えるこの姿だった。
外観をキューブに見立てるためのこだわりもすごい。ガルバリウム鋼板を用いた外壁は固定のための金具などを隠してフラットに計画。角のエッジも鋭くし、「箱」の印象を高めた。またバルコニーやテラスは、全体から小さなキューブをくり抜くイメージで計画。この「CUBE house」のような木造住宅では、一般的には張り出した角部分に上部を支える柱を設けるが、それでは余計な線が増えて「くり抜いた」という印象が薄れてしまう。そこで、方法を熟考したうえで柱を省いたのだという。柱がないことによって大きなキューブから小さく一部分を抜いたというイメージが強まったほか、浮遊感も生まれ、まさに屋根がフラットな、このフォルムだからこその意味や魅力が感じられる建物ができた。
「木造だからこういうつくり方が当たり前、ということではなくて、どうやったらできるのかという姿勢で家づくりをしています」と山口さん。シンプルでモダンなデザインを実現するため、大工や板金職人たちとも相談を重ね、凹凸や目に入る線の数を減らす作業を妥協せずに突き詰めたと語る。Kさまも「想像以上にかっこいい家になった」とお喜びだそうだ。
キューブをくり抜いてつくった住空間は
開放感も落ち着きも抜群の、上質な居心地
外から一部分をくり抜いてテラスやバルコニーとしたように、キューブの内側もくり抜き、生まれた空間を暮らしの場としたのだという。そのうえで、1階と2階を繋ぐ階段を片持ちのスケルトンとするなど、後付けした要素はキューブの印象を損なわないよう考慮。また、スポットライトを壁面に整然と並べ、2階のキューブのエッジを引き立たせた。
もちろん、1階のLDKそのものも大きなキューブの中にいるような感覚で過ごせる。LDKは家の側面と裏面に当たる南から東にかけての2面を、L字に計画した窓で大きく開口した。木造の構造上L字の間に3本柱が入ったが、窓部分は木材を表面に出すことで白一色の壁面と窓を感覚的に切り離すことに成功。複数の窓枠で構成された窓が、L字に連続した1枚のものとして認識できるようになり、おかげでその内側にあるLDK空間も分断されずに大きくひとつにつながったという。
これらの工夫により広々とした空間を実現したLDK。南側に大きな窓があるおかげで採光も申し分なく、山口さんによれば「冬場に向けて床暖房を取り入れましたが、利用頻度は少ないそうです」とのこと。
さらに、吹き抜けの高い位置に視線が空へ抜ける窓を設けたほか、2階のキューブを生かして居場所によって天井高を変化させて大きな空間の中にメリハリをつけた。1日をLDKで過ごすにあたって、気分や目的によって開放感が得られる場所から落ち着きを感じる場所へと居所を変えるのも楽しいだろう。
お施主さまの思いを表現した、
家がひとつに繋がる吹き抜けとリビング
子どもたちは玄関からリビングに入り、階段を上がって廊下の横に配置された子ども室へ入る。リビングからは通路を出入りする様子も見えるが、子ども室は独立しているため必要なプライバシー性は保たれる。ただ現在は山口さんが計画したLDKの居心地のよさのおかげで、予想以上に長い時間を家族それぞれがリビングで過ごしているという。「お子さまたちの年齢が上がれば、また過ごし方も変わるのかもしれませんが」と山口さん。お施主さまの思いと、日に日に変化する暮らし方に対応することをバランスよくデザインに反映する姿勢も、長く愛される家である秘訣となっているのだろう。
ヒアリングを丁寧に行い、Kさま一家に合わせて暮らしやすさも整えた。まず、食品庫をキッチンの背部に大きくゆとりを持って計画。食品庫というものの、食器棚や家電もその中に収納することにし、LDKの見える部分をすっきりとまとめた。また、1階には大型のウォークインクローゼットを配置。出入口は一方をリビングに、もう一方を玄関と繋げた。玄関側のエリアには大きな靴箱を設け、玄関に靴が散らかることを防いでいる。
家づくりにおいては、意識の共有を大切にしているという山口さん。具体的にどういうことなのかと尋ねると、「広々とした快適なリビングといっても、私、ご主人、奥さま、お子さまたち、それぞれに思い浮かべるものは違いますよね」との答え。お施主さま家族の誰もが自由に発言できる環境を整え、画像なども豊富に使いながら同じイメージが思い浮かべられるようにしていくのだという。
さらに、打ち合わせを通してお施主さまの思いを伺い、そこから受けたインスピレーションをデザインに反映していく。だからこそ、これまで1つとして同じ家を計画したことがないと笑う山口さん。これが自身の特徴だと感じられるテイストがないのだという。過去の作例を見て「こんなイメージで」と請け負ったとしても、そこにその家族ならではのインスピレーションが加わるため、イメージは守ったうえでまったく新しい家ができる。
家族ひとりひとりの思いが、他の家にはない特徴として反映される山口さんの家づくり。これからも、お施主さまが愛着を持ち豊かに暮らせる家を生み出していくことだろう。
基本データ
| 作品名 | CUBE house |
|---|---|
| 所在地 | 佐賀県鳥栖市 |
| 敷地面積 | 290.12㎡ |
| 延床面積 | 140.78㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
撮影:yousuke harigane
設計者情報
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