
二世帯住宅で家族が集まる。
30人!?でも幸せな空間とは?
集まる場所も大切。一人にもなれる工夫で全員に心地よい
ご両親から話があったのは20〜30人集まれる広い部屋がほしいということ。お父さんが長男で、親類が集まる機会が多いのだという。玄関土間から直接あがれるLDKは充分な広さをとり、仏壇も置いた。普段はメインのLDKとして使うが、若い夫婦もご両親も働いていて平日に揃って食事をとることは滅多にない。ダイニングはキッチン脇に小さなテーブルを置くにとどめ、大勢で座ってくつろげるスペースを広くとった。
メインのLDK以外の生活スペースは土間でつながった、もうひとつの建物にまとめた。1階は親世帯と客間、2階は子世帯だ。小林さんによれば、部分的に共有するタイプの二世帯住宅では滞在時間の短いところから共有にしていくのがセオリーだという。「玄関を使うのは出入りだけですし、浴室も時間を決めて入ればいい。リビングのような長時間いるところから共有すると、家族の誰かがくつろげなくなってしまいます」と解説する。小林さんはどこまで共有するのがよいか、家族が話し合う様子を見守った。
「初めは子世帯のキッチンやリビングも小さくていいと話していましたが、最終的に子世帯だけでも生活できるレベルになりました。これが反対の方向だと心配でしたね。子世帯が小さくなっていくとお嫁さんの逃げ場がなくなってしまいますから。いざというときは部屋に閉じこもればいいと思えるだけでも気持ちが楽になると思いますよ」と小林さん。決して仲の悪い家族ではない。むしろ、「お父さんは酔っぱらって2階(子世帯)に行っちゃダメよ」とお母さんにたしなめられるほどだが、夫婦それぞれに生活のペース、生活スタイルはある。最もプライベートな寝室は親世帯と子世帯は離れた位置にするなど、家族同士が余計な気遣いなく生活できるよう、小林さんは細心の注意をはらった。
お互い気にならずに過ごせるスペースをつくる一方、家族がなんとなく集まれる場所も意識したという。「玄関土間は広すぎると落ちつかないので、靴と仏壇をしまう収納ボックスを置きました。ここにはストーブがあったり、階段に腰かけられたりして、人が集まりやすくなっています。工事中も現場の人が自然とここで休憩していて。僕も打ち合わせが終わると座ってご飯を食べることもありました」。裸足やスリッパで通るだろうからと、あたたかみのある大谷石にしたことも、この玄関土間をとどまりやすい場所にしている。
こもれる場所とたまれる場所をバランスよく配置した大きな家。新たな家族の生活にあわせて、建て替え以前とは大きく変わった。唯一変わらないのは庭の緑だ。お祖父さんの代に手をかけていた立派な庭木はそのまま残した。
「松の下をくぐって玄関に入る感じは前と変わらないね」。かつての家で育った兄弟たちは新築祝いに訪れて、そんな感想をもらした。そこに住む家族にも、ひさしぶりに帰ってくる家族にも、みんなに心地のよい家になった。
話し合ううちに、楽しい使い方や空間のアイデアが湧いてきた
まず、家族がもっていた、たくさんの本をまとめて、共有の図書スペースをつくろうというアイデア。そこにある本は誰でもとっていいという、共有の本棚があったらいいと、ちょうど良い場所を探した。目をつけたのは1階の廊下にある鉄骨の上。10m以上もある長い廊下は本の置き場所にピッタリだった。むきだしになった鉄骨と鉄骨の間に本棚を取り付け、家族共有の図書スペースができあがった。
メインのLDKの上にあるルーフバルコニーにも心踊る場所がある。広いバルコニーを物干し場として使うため、布団干し用の鉄のフレームをつくろうと打ち合わせていた時のことだ。緑に囲まれたバルコニーは風が抜けて、山の上にいるような気持ちのいい場所。洗濯物を干すだけではもったいない。「このフレームを大きくしたら、タープをかけてテントがつくれるね」という思いつきに「ハンモックをかけたら面白いんじゃない」などと構造家のご主人と大いに盛り上がった。当初は布団を干すだけの予定だった鉄パイプのフレームはタープやハンモックも吊るせる立派なものになった。
「今度、ハンモックをプレゼントするんです」と小林さん。「できて間もないので今はガランとしていますが、当初考えていたよりもだいぶ大きな家になっていて余裕があります。住みかた次第では面白くなると思いますよ」
基本データ
| 所在地 | 東京都西多摩郡 |
|---|---|
| 敷地面積 | 1059.09㎡ |
| 延床面積 | 234.28㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+両親 |
| 施主 | Q邸 |
撮影:Atsushi ISHIDA
設計者情報
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