
“当たって砕けろ”と人気建築家にチャレンジした結果、
理想以上の家が予算内で。
ダメもとで訪ねた建築家に即決。
「一戸建てに憧れがあったのと、結婚を機に自然環境のよいところで暮らしたいという希望もあったので、家を持つなら一戸建てだと思っていました。でも、一戸建ての住まいの知識はないですし、自分で建てるというのはちょっと遠い出来事というか。それもあって、当初は建て売り住宅を見ていたんです。今は建て売りでもけっこうおしゃれなものもありましたし、それでいいかなと思っていました」とNさん。
その住まい探しの過程で手にとった2冊の住宅雑誌を眺めていたところ、2軒とても気に入った住まいがあった。
「その2軒は夫婦ふたりがどちらも“この家、いいね”と気に入った家だったんです。よくよく読んでみたら、その家は同じ建築家が建てた家で。それが松本直子さんでした」
建築家どころかハウスメーカーや工務店で建てることも検討していなかった夫妻だが、「建て売りを買ったあとに“建築家に建ててもらうっていう選択肢もあったよね”と、後悔するのはイヤだな、と。大きな買い物ですから納得して終わりたいという気持ちがあって。だったら、“当たって砕けろ”じゃないですけど、断ってもらって構わないのでとりあえず話を聞いてもらおうという結論になりました」と、松本さんの事務所にコンタクトをとった。
建築家というと、独自の美意識を持ち近寄りがたいイメージもあったというが、実際にやりとりしてみると拍子抜けするほどソフトで丁寧な対応だった。
「とても細かく要望を聞いてくれて、こちらが緊張するようなこともないですし、営業色もまったくない。建て売りを見に行ったときのほうが緊張感あったくらいです(笑)。予算に限りがあったのが心配だったのですが、“大丈夫ですよ、なんとかなりますよ”と快く受けてくれて。逆にこちらが“本当にいいんですか?”と言ってしまったくらいでした」
松本さんに相談するのと同時に土地探しも進め、最終的には松本さんの助言をもらいながら現在の土地に決定。そこから本格的に住まいづくりをスタートした。
新しい暮らしにワクワク夢が膨らむプラン。
「もともとデザイン的には打ちっぱなしとかイームズの椅子が似合う家が好きだったんですが、長く探しているうちに自分たちの暮らしとか、必要なものが明確になってきて。かっこいいけど無理しながら暮らす家じゃなくて、家事動線や採光など使い心地や居心地がよい、実際の日々の暮らしを優先した家が自分たちらしいと思うようになりました。かといって生活感丸出しの家がいいわけではなく、デザイン的にも居心地の良さも大切。そもそも、雑誌でみた松本さんの家が気に入ったのも、機能だけでもデザインだけでもない、その絶妙なバランス感がいいと思っていたので、その松本さんらしさをいかした家をお願いしました」
松本さんから提案された家は、1階は中庭やテラスを取り囲むように玄関土間や廊下、部屋やアトリエが配された思いもよらなかったプラン。2階はリビングダイニングとキッチン、バスルームやパウダールームなどの水まわりのみと、潔くレイアウトされていた。
「家のカタチが想像もしなかったテトリスみたいなカタチで、そこにテラスや中庭があって、“なんだか面白そう!”とひと目で気に入って。私たちの想像をはるかに超えた提案で、間取りを見ているだけで楽しくて。“テラスで何しよう”と、ワクワクしてしまいました」
夢が膨らむプラン提案だけでなく、快適で暮らしやすそうな住まいが予算内できっちりおさまっていたこともNさん夫妻にとっては驚きだった。
「よく雑誌やTV番組の家づくりを見ると“500万円予算をオーバーしてしまいました”みたいなことってよくありますよね。うちは予算内で建てたかったので、そういうことがあったら困るなと(笑)。でも、なるべく無垢材を使いたいとか、質の面でもこだわりがあったんです。そこの提案の塩梅が松本さんは絶妙なんですよ。コストダウンの方法も教えてくれるし、こだわっている部分には“手が届く範囲のいいもの”を提案してくれる。工務店さんにも掛け合ってくれて、予算をかけるところとマイナスするところをバランスよく組み立ててくれて、本当に助かりました」
デザイン、使い心地、居心地、予算すべてに妥協することなく完成した新居は、生活も心もあり方も変えてくれるものになった。
「場所ごとに風景が変わって、家の中にずっといても変化があって楽しいです。今は階段の上り下りさえ心地良いくらいで(笑)。面積的には決して広い家ではないのですが、部屋によって風景が違うからか、家が広く感じます。本当に居心地がよくて、ストレスがまったくなくなりました。家の中にいても自然や四季が感じられて、こんな快適な生活があったんだ、と思うくらい。人間本来の暮らしに戻ったような感じで、規則正しい生活をするようになりました。当初は建築家と家を建てることは想像もしなかったことですが、本当に勇気をもって相談してよかったです。“チャレンジしてみるもんだね”と、夫婦で今でもよく話しています」
【建築家 松本直子さんコメント】
奥さまは絵を描かれていますし、ご主人もプロダクトデザインに関わっていて、美的感覚に優れたご夫妻。住まいや暮らしに対する意識の高いご夫妻だったので、ただ機能がおさまっただけではなく、シンプルだけれども何かワクワクする仕掛けがあるような家になったらいいな、と思いながら設計しました。たとえば、玄関から廊下を通して中庭やテラスが見えたり、1階のアトリエから中庭や前庭を眺められたり。場所ごとに何か記憶に残る風景がある家になるといいな、と思いました。テラスはもともと要望にあったわけではなく、プラン上でうまれたもの。でも、風景としていい役割をしますし、BBQをしたり子どもを遊ばせたり、想像が膨らんで楽しいと思いました。Nさまもそこの部分に共感してくれたのでスムーズに実現させることができました。コストの制約はありましたが、それは工夫次第でいかようにもなることなので建築家に任せていただければと思います。
間取り図
基本データ
| 所在地 | 千葉県我孫子市 |
|---|---|
| 家族構成 | 夫婦+子ども1人 |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | N邸 |
撮影:アトリエあふろ(糠澤武敏)
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

家族の距離感、街との距離感が絶妙。ほどよいつながりが心地いい、大人の二世帯
それぞれのライフスタイルが確立された、20代~70代の6人家族が暮らす二世帯住宅を手がけた建築家の熊田康友さん。敷地環境で課題だった採光と、家族のちょうどいい距離感を実現したのは、「吹抜けの中庭風デッキ」という熊田さんのアイデアだった。

リノベーションだからこそ叶えられた 安全、快適、立地すべてを満たした住まい
結婚を機に自宅をつくろうと考えた建築家の西本さん。選んだのは事務所のすぐそばで売りに出ていた倉庫をリノベーションすることだった。和歌山市内でも一等地で住まいを持てたのはリノベーションを選んだからこそという西本さん。安全性を高め、光や風にあふれる住まいをどのように実現したのだろうか。

趣味もフロアも悠々!一人暮らし「ならでは」の暮らしと家づくり
間仕切りがなく、全てがつながった巨大なワンルームのような一軒家。一人暮らしを楽しむK邸だからこその開放的なレイアウトが、この家の特徴的な個性であり魅力となっている。住まい手の希望する暮らし方や使い方にしっかり寄り添い、形にする建築家・久保田鏡湖さんの家造りに迫る

閉じた外観からは想像できない空間がそこに 非日常の驚きと寛ぎが体験できる別荘
人が「別荘」に求めるものは何だろう?毎日の生活とは違った「非日常」や極上の「寛ぎ」という答えは多いはず。施主のNさんは「森や空といった自然を感じられる開放感」というものだった。その一方、プライバシーは確保したい。この相反する要望に応え、限られた予算の中でドラマや映画で出てきそうなラグジュアリーな別荘を生み出したのは、建築家ユニットSSSの関さんと鈴木さんだった。

家族をつなげる「吹穴」とは? 居心地抜群のLDKをローコストでも可能に
独創的でセンスあふれる空間設計を得意とし、多大なコストをかけずに「洗練された住みやすい家」をつくってくれるイノウエヨシムラスタジオ。N邸でもその手腕は発揮され、一般的な家では見かけない「吹穴」があるという。いったい、どんな家なのだろうか?

家族が集まる空間を最優先。家族の声があふれる家
富山県砺波市のA様宅は、まだ小さなお子さん3人が元気いっぱいに走り回る家です。モダンさと木の質感がほどよくマッチしたお宅は、自然あふれる住宅地の中でもひときわ美しい家となっています。「ここはすごく自然が多いんですよ。私も山で釣りや山菜採りを楽しんでいます。」と建築家の長守さんが語る町にある、素晴らしいお宅をご紹介します。

自然豊かな環境を、さらに魅力的に。 明るく開放感抜群の、丘に埋もれた山小屋
恵まれた自然環境を生かし、明るく開放的に暮らしたいとお考えだったお施主さま。建築家の上原さんは要望に応えるため、なんと建物を半分地中に埋めてしまった。完成した生活空間は地下。しかし、自然光で明るく、風が抜け、空も見えて気持ちがいい。さらに、家ができたことで自然の魅力も増したという。

建築家ならではの工夫が満載の1Rリノベ 「ここに住みたい!」と選ばれる物件に
どこも同じようなつくりになりがちな、都心部にある1R。立地以外の差別化が難しく、とかく家賃競争になりがち。中古マンションの1R一室を自ら購入し、「ここに住みたい!」と思わせる物件へと再生、しっかりと収益性も確保したのは、蟻川建築設計事務所の蟻川さんと村田さんだった。

心地いい風が入る、伸びやかなリビング。 バリアフリーの平屋はゆとりある空間が魅力
空き家となっていた奥さまの実家を建て替えることにしたIさまご夫妻。違う場所にお住まいのお母さまがときどき来られたときのことを考え、バリアフリーの家をつくることにしたという。とはいえ、基本的にはお二人で住まわれる家。絶妙な空間のつくり方により、ご夫妻とお母さま、皆にとって住みやすい家になった





