
《集合住宅》
新しい神楽坂を象徴の佇まいと個性ある室内デザイン
迷わず住みたくなる賃貸マンションをつくるには
このモンマルトル神楽坂は、副業でいくつものマンションに投資をしているオーナーが、建築家の小林さんとつくった最初の賃貸物件だ。神楽坂を皮切りに東京で既に5棟の物件が進行している。せっかく自分が関わるなら良い建物にしたいというオーナーは、小林さんに相談しながら、ひとつとして同じデザインものにならないようにこだわった。
この辺りならこの広さで賃料はいくら、オーナーが不動産屋さんと収支をみたところで建築費の概算が決まり、小林さんとの打ち合わせが始まる。神楽坂なら働き始めて数年経ったシングル、あるいは共働きで子どものいない若い夫婦やカップルだろう。 ちょっと余分に出しても良いところに住みたい人なら、床暖房をつけてもいいかもしれない、女優気分になれるハリウッド照明は女性の心を掴めそうだと、あれこれ検討した。仕事柄、住宅にも多少の馴染みがあるオーナーはコストをかけてでも入居者のニーズに合ったデザインにしたいと考えていたし、小林さんも「ワンルームとか、1Kとかって住まい心地には関係ないというか、気持ちいい方がいいですよね」という考えだったこともあって、当たり前の賃貸住宅よりも少し冒険をした。冒頭のロフトのある最上階もそう。一般的には、斜線規制で斜めに切り取られるようなところに無理をして部屋はつくらないが、屋根裏っぽい感じも悪くないのではと敢えて四角くない部屋をつくった。
今の時代、回転の早い都会の賃貸でも決して空き室リスクと無縁ではいられない。「おじさんが頭を寄せて、最近の若い女性が何を好むのかと話し込んだ」と小林さんが笑うほど真剣に、トレンドも押さえた。一方で、建物そのものは寿命が長いので、ベースになる空間はしっかりつくった。窓枠から壁から、手間さえかければ質のあがるところには手間を惜しまず、良いものを残せるように心がけたという。
周辺は昔ながらの印刷所が点在するのんびりした雰囲気だが、最近では倉庫をリノベーションしたカフェもでき、これから街の様子が変わっていきそうな予感がある。一足早く新しさをとり入れたマンションとこの街のこれからが楽しみだ。
ひとつひとつ表情の違うデザインはオーナーも楽しい
「マンション経営としてのバランスももちろん考えてらっしゃるでしょうし、長い目で見て価値のある建物にしたいという思いもお持ちだとは思いますが、どこかで楽しいものをつくりたいという気持ちもあると思うんですよね」と小林さん。2棟目では不動産情報として掲載する物件の写真も、カワイイ雑貨を並べた、こだわりの1枚を用意した。情報を集める手間も、建設に余分にかかる費用も厭わないオーナーの、他とは違うものをつくりたいという思いが、地域によって雰囲気のまったく異なる賃貸物件を生み出しているようだ。
1ヶ月であっという間に満室になったモンマルトル神楽坂の手応えもあり、小林さんとのタッグで、まずは10棟を目指そうと意気込みも充分だ。
基本データ
| 所在地 | 東京都新宿区 |
|---|---|
| 敷地面積 | 70.57㎡ |
| 延床面積 | 223.08㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
| 施主 | 集合住宅 |
撮影:アトリエあふろ(古川公元)
設計者情報
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