
緑豊かな中庭で、充実の家族時間
カーテンを開け放しておおらかに暮らす家
こだわりの外構デザインで
プライバシー確保&街との調和を両立
施主のHさんは育ち盛りのお子さん2人がいる4人家族で、休日はキャンプなども楽しむアウトドア好きのファミリー。自邸建築にあたっては屋外の心地よさを味わえる「カーテンを開けっぱなしにできる家」を望んでおり、奥村さんの提案で、中庭に向かって大きく開口したコの字型の住まいをつくることになった。
敷地は東に畑、西に道路、南北に隣家という環境だが、完成した「コノジノイエ」は東に背を向け、西に開いたコの字型。東は畑で人目がないからそちらを開くほうがプライバシーを守れそうに思えるが、なぜ閉じたのだろう? 不思議に思って尋ねてみると、「土地開発の流れ的に、東はいずれ宅地分譲される可能性もゼロではないと考えたからです。もしそうなれば高さのある建物が立つこともあり得るので、あらかじめ閉じておくことをご提案しました」と奥村さん。放っておかれたら逆を選んでしまいそうなだけに、プロの経験・知見を踏まえたこういうアドバイスは本当にありがたい。
とはいえ、先述の通り西には道路が走っているため、プライバシーを守る塀や植栽はしっかりと計画。コの字の建物配置と外構プランで敷地内への視線をカットし、「カーテンを開けっぱなしにできる家」という要望に応えている。
また、外構では周囲の街並みとの調和も図っており、デザイン性のある有孔ブロック、自然の表情を感じられる木塀、野趣に富んだ山採りの樹木などを採用。さらに、2階の軒は道路側へゆるやかに下げて建物のボリューム感をダウン。控えめで洗練された造形と有機的な木々や緑の相乗効果で、長閑な住宅街に溶け込むナチュラルモダンな外観に仕上げている。
「中庭はリビングの一部」
自然素材の上質空間で四季の移ろいを楽しむ
足を踏み入れ最初に圧倒されるのは、LDKのおおらかな開放感。最大で高さが約7mある吹抜けの高天井にも驚くが、それ以上に心をつかまれるのが目前に広がる中庭の光景だ。
温かみのある木製サッシの建物に囲まれた中庭は自然のままの姿で育った山採りの木々ときれいな芝生に彩られ、一角には森林のコテージを思わせる大屋根付きのインナーテラスも。目を閉じて大きく深呼吸してみれば、心癒やす緑のにおいと木の葉が風に揺れる音。道路からは想像もつかない光と緑あふれるリゾートホテルのような空間が、H家だけの上質なプライベートゾーンとして広がっている。
この中庭は眺めるだけでなく生活空間としても存在感を発揮する。窓框が目立たないようにデザインされているのでLDK前のテラス~中庭との一体感が非常に高く、中庭はもはやリビング・ダイニングの一部。当然ながら、中庭を囲むフリースペースや主寝室も全て自分の家で外部の視線はどこにもなく、安心してくつろげるのもいい。
そして、屋外の心地よさを満喫できる居心地抜群の空間を、さらにランクアップしているのが内装の素材使いとデザインだ。
日頃から「目に見えない心地よさ」を重視し、「心地よさは壁や床の素材感、窓からの光の入り方などに大きく左右されますが、これらは間取り図を見ただけではわかりません。そういった図面や数字で見えない部分にも心を配り、実際に暮らして心地よいと感じられる家をおつくりしたいと思っています」と話す奥村さん。
「コノジノイエ」でも自然素材を好むHさんの要望に応え、壁は質感を楽しめるように砂漆喰で厚みを出した左官塗り、天井は無垢のヘム、床はオークをセレクト。窓は緑と相性の良い木製サッシを選び、主立った建具や造作家具は奥村さんがデザインするなど、本物志向の丁寧な仕事で上質な空気感を生んでいる。
本能的に心地よいと思える自然素材の風合いが生きた空間で、人目を気にせずカーテンを全開し、庭の景色と空の光で四季を感じて暮らしていく──。簡単そうで意外と手に入らない豊かさを実現した「コノジノイエ」は、「第28回静岡県住まいの文化賞の優秀賞・豊かな暮らし空間創生推進協議会賞」を受賞した。日常の環境が知らず知らずのうちに心や身体の元気をはぐくんでいくのなら、この家は最高の条件を備えているのではないか。おそらく審査員の方々は、そんな風に感じたのではないかと思う。
「本当は平屋を望んでいたけれど……」
家づくりは、気兼ねなく相談できる人と
「コノジノイエ」は木造2階建ての住宅で、2階にはお子さんのための子ども部屋が2室ある。当初、Hさんは平屋を望んでいたが「建ぺい率の制約がある中で欲しいスペースのご要望に応えると、ワンフロアでは少し窮屈になることが想定されました」と奥村さん。ならばと、いずれは不要になるであろう子ども部屋を2階に上げ、長きにわたって使い続ける1階は妥協のないゆとりある間取りにしてはどうか?と提案したという。
果たしてその提案は大正解。1階には家族が憩うLDKのほか、親子でフレキシブルに使えるフリースペース、奥さんが希望していたランドリールーム・ファミリークローゼットもゆったりつくることができ、住み心地、快適性、満足度の全てがパーフェクト。Hさんは「引っ越してから家にいる時間が格段に増えました。この家は、私たちの要望を余すことなく形にしていただいた理想の住まいです」と言い切る。
建築のプロではない人が要望を的確に伝えるのは難しいし、建築規制の制約が自分の希望にどう影響するかなんて、大抵の施主にはわからない。
だからこそ奥村さんは、「望んでいるライフスタイルをくみ取り、専門家の視点から、諸条件に鑑みた最適解をご提案したいと思っています」と話す。確かなスキルやノウハウもさることながら、施主の言葉の奥にある「理想の暮らし」をわかろうとしてくれる親身な姿勢は、奥村さんの大きな魅力なのだ。
「そうそう、こういうのが欲しかったんだよね」
プランを出して、そう言ってもらえたときは本当にうれしい。うまくいくときばかりでもないですけど……と、穏やかな笑顔を見せてくれた奥村さん。
気構えずに相談できる奥村さんのような人となら、対話を重ねていく中で、自分でも気づかなかった要望が明確になっていくのではないだろうか。そうして完成する住まいは、当初、頭の中で描いていたものよりずっと素敵で満足でき、人生を豊かに彩ってくれる可能性を秘めている。
撮影:Takahiro Sashio
基本データ
| 作品名 | コノジノイエ |
|---|---|
| 所在地 | 静岡県沼津市 |
| 敷地面積 | 334.47㎡ |
| 延床面積 | 156.64㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子供2人 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

玄関に入った瞬間に広がる大空間。 シンプルだからこその豊かさが感じられる家
家族で暮らす家を新築するにあたり、造作家具を生かせる空間にしたいとお考えだったお施主さま夫妻。設計を担当した建築家の三輪さんが要望を受けて実現したのは、シンプルを極めたかのような開放的な大空間。驚くのは、シンプルに整えたからこそ、暮らしやすさや家の使いやすさも極まっていることだ。

生活にメリハリができる多様な空間構成。 伸びやかな天井の下、優しい光と暮らせる家
建築家の岡さんは富山移住を機に自邸を新築した。移住を決意するきっかけとなったのは、連なる山々の美しい風景だ。後立山連峰と田園風景が楽しめる絶景の地を購入し、思い浮かべたのは「大樹に守られた暮らし」。大きな屋根が包み込む家で、テーブルを囲んで集う家族の暮らしぶりを見てみよう。

限られた予算の中、コストを抑えて叶えた 自然の素材に囲まれた暮らしができる家
以前設計した、自然の素材をふんだんに使った家のオープンハウスがきっかけで、新築一戸建ての依頼を受けた建築家の西本さん。お施主さまが考えられていた予算は潤沢ではなかったが、工夫を重ねてコストを削減。要望を叶えただけでなく、家族の絆も深まる家をつくり上げた。

保育園園舎の建て替えプロジェクト 新しい学び舎に響く子どもたちの歓声
大分県別府市にある認可保育園「リトルメイト」。創設から約20年、園舎建て替えにあたり白羽の矢が立ったのが、建築設計事務所YRADの田中悠希さんと榎本亮祐さんのおふたりだ。施主である園長先生が長年温めてきた具体的かつ多岐にわたる要望に、おふたりはどのように取り組んだのでしょうか。

北向きなのにこんなに明るい!日光の力を最大限に引き出した家
築50年の我が家の耐震補強を、というご希望から始まったリフォームだったが、さまざまな理由からもとの家の半分を残してリノベーション、もう半分は壊して建て替えることに。50年の年月を経て生まれ変わる家と新しく建てられる家。その間には気持ちのよい庭になるであろうスペースがあり、お母様がお住まいになるという新しい家は、北向きにも関わらず光に満ちている。

2棟同時新築は家族の住まいの最適解 家族の和も長年の夢も叶えた白い家
夫婦共働きでの子育てが当たり前になった昨今、増加傾向にある親との同居や近居。ほどよい距離感でそれぞれの世帯が自由に暮らすため、2棟の住宅を新築したNさん・Yさんご家族。1階だけで生活が完結し、光あふれる空間で過ごしたいという親世帯の想いを実現した白い家に迫る。

オーナーの思いを唯一無二の魅力として表現 自然と家族が集まるリビングを内包する家
モダンでシンプルな佇まいの家をお望みだったお施主さま。建築家の山口さんは、線を省き単純化することで要望に応えた。完成したのは、小さなキューブを組み合わせたような四角い家。内部は吹き抜けがあり開放的で、おおらかに空間がまとまっている。自然と家族が集まるリビングはどのように実現したのだろうか。

家族を守る大きな片流れ屋根 自然を感じ、日々の変化を楽しむ暮らしを
自然豊かな環境が将来的にも続くと思われる場所に、家族で住む家を新築。緑を家の中に取り込み、かつ、沖縄の強い日差しや暴風雨にも対応できる家にしようと考えた。建築家の比嘉さんが提案したのは「片流れ屋根の家」。機能性に加えてデザイン性も高い、家族が安心して暮らせる家ができた。

1階に生活を集約、安全に暮らせる家に。 築100年の古民家をリノベーション
古民家に一部増築した家で暮らしていたお施主さまは、2階建てでの暮らしに不安を覚えるように。それまでほぼ使用していなかった古民家をリノベーションし、生活の範囲を広げ1階のみで暮らしたいと考えた。建築家の戸川さんは直面した不安だけでなく将来も見据え、安心して暮らせる家に生まれ変わらせたという。





