
無垢の木材の魅力に着目!
2人の子どもの成長を見守る、2枚の大きな切妻屋根の住まい
2人の子どもの存在を軸に住まいのプランを練り上げていく
「Yさんご夫妻が求めていらっしゃったのは、"子どもたちが帰ってきたのが分かる""出かけるのが分かる"住まいでした。特に、"玄関からリビングを通って各部屋へ行ける動線づくり"を重視されていましたね。それ以外の部分に関しては、部屋の数なども含めてすべてお任せいただきました」と日部さん。
日部さんの住まいづくりには"無垢の構造材を用いる"というテーマがある。これからの世代の方たちに向けて、木造の住まいの素晴らしさ、魅力を伝えていきたいという思いがあった。今回、Y邸の立地や、2人のお子さんがこの家で成長していくことに思いを馳せ、木の香りや、木造住宅の構造が身近に感じられる家づくりを提案、Yさんご夫妻も、日部さんのプランに賛同してくれた。
こうして、Y邸の方向性が定まった。しかし、木造住宅の構造が身近に感じられる家づくりを実現するには、良い大工さんの存在が不可欠だ。「現在の工法はプレカットが主流になりつつあります。まるでプラモデルのように部材を順番どおりに組み立てていくので、家の全体像を描きながらつくる大工さんは少なくなってきた気がします。今回の工法は、大工さんによる手刻みで加工を行っています。手刻みで全ての構造部分の墨付、加工を自ら行うので、初期の段階で、家の全体像が描けている気がします。その点、完成形が描ける大工さんでなければ、Y邸をつくることはできないと思います」と日部さんは語ります。
無垢の素材へのこだわりと、腕の良い大工さんの存在があればこそ実現した住まい
また、親世帯と同じ敷地に家を建てることで、立地上、リビングの前が通路になってしまう。開放的なリビングにすると、オープンすぎる空間となってしまう。そこで、丘を登るような感覚のスキップフロアを設けることで、この問題をクリアした。ゆったりとした4段の階段が、まるで丘を登るような感覚でリビングへと誘ってくれる。しかも、この段差を、子どもたちが楽しそうに遊んでくれているという。
「今回、Y邸を手掛けるにあたり、玄関は一度景色をシャットアウトするようなイメージでつくりました。土間というより、路地に近いイメージです。薄暗い黒いトンネルを抜けたら、そこにまた違う町があるような…。そんなストーリーを込めています。ここの素材も、塗装した板ではなく焼き杉を使っています。Y邸を手掛けた大工さんがとても器用だったんです。住宅に限らず家具や椅子などもつくってくれる方でした。吹抜けを見上げると、小屋裏の垂木や梁を表し仕上としていることが分かります。さらに、小屋裏には斜の棟木がかかります。中でも、建物の大黒柱に取り付く梁の仕口は特にこだわりました」と日部さん。
Y邸では、"玄関からリビングを通って各部屋へ行ける動線づくり"にも注力した結果、子ども用を含む各々が、一度はリビングを通って各部屋に行く仕様となった。Y邸にはユニークな部屋が玄関の側に設けられている。
「3畳ほどの書斎です。敢えて生活空間から離れた場所に設置してあります。ここで本を読んだり、お子さんの学校関連の作業を行ったりする部屋です。座って過ごしていただくことを前提に設計してあるので、天井高も2.1mほどしかありません」と日部さん。
注文住宅というと、ディテールや間取りにこだわることに注力するあまり、素材選びは二の次…というケースもあるだろう。しかし、本来であれば、もっと素材選びに重きを置いても良いかもしれない。新築の住まいであれば、完成した直後がもっともきれいな状態であることは言うまでもない。これが無垢素材であれば、新築の状態でも多少の節やひび割れといった傷があるかもしれないが、経年変化を愛でる楽しみもある。
無垢ならではの自然な風合い、肌触り、匂い、そして、時の流れとともに変化していく"味"を楽しみつつ、10年先、20年先の未来に、自分たちの住まいにより深い愛着を持って暮らしているかもしれない。
基本データ
| 所在地 | 群馬県安中市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 127.92㎡ |
| 延床面積 | 115.92㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | Y邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

猫たちも大満足の工夫がいっぱい。 お気に入りの家具も似合う家をローコストで
「ユウ建築設計室」の吉田祐介さんが手がけたこの家は、2匹の猫と暮らすOさま一家の住 まい。邸内には、猫と人間が楽しく暮らせる工夫が盛りだくさん。猫の習性に配慮しつつ 内装デザインにもこだわり、風合いのある家具が映える素敵な空間が完成した。

こだわりをさりげなさで包み込む 「静かにデザイン」された家
愛知県犬山市。一面に田んぼが広がるのどかな雰囲気のなか、温かみがあるシンプルな木の家が建っている。風景になじみながら、同時に人の目を引く不思議な魅力をもつ家だ。この家を設計した、建築家の伊原洋光さん・みどりさん夫妻が語る「静かにデザインする」という言葉の意味を、このY邸から探ることにしよう。

家族やペット・友人との寛ぎやテレワークも 自然豊かな場所に佇む上質セカンドハウス
キャンピングカーで全国津々浦々を巡っていた施主のAさん。車の買い替えを機に、拠点となるセカンドハウスを計画されたそう。その設計を任せたのは、顧客の「想い」を実現する家づくりに定評のあるef設計の木下さん。木下さんは、自然豊かな環境にマッチしたセカンドハウスを実現してみせた。

タワーマンションを完成前に自分色に 建築家と共に「プレカスタム」した理想空間
新築マンションを購入したものの、標準仕様では理想のホテルライクな住まいには届かない。完成後に壊してリノベーションするのは、お金も時間も資源も無駄だ。ならば着工前に交渉して、自分色に染められないだろうか。そんな施主の想いに応えるため、建築家は通常の「設計」「施工監理」に加え、「交渉」という第三の役割を担った。10年来の信頼関係で結ばれた施主と建築家が、粘り強い対話を通じて実現した「プレカスタム」の全貌に迫る。

重なりとつながりが家族を包む「ラップハウス」
子育てのため奥様の実家近くに土地を購入したSさんご家族。建てる家には「家事や子育てのしやすさ」「将来的には太陽光発電を」など夫婦ともに希望があった。しかしハウスメーカーには好みの家がなく、細かい希望が通じにくい。悩むご夫婦に大川さんはそれぞれの希望を盛り込んだ家を提案。「ラップハウス」と命名されたその家とは?

パン教室のできるキッチン!難しい土地で実現した妻子の大満足!
施主であるSさんが家を建てることになったのは、隣家が採光を阻む北側斜面の土地。悪条件を乗り越えて陽光が降り注ぐ住まいを実現し、みごと「住まいの環境デザイン・アワード」を受賞した建築家の技に迫る。

変形敷地だからこそできた空間の広がり。 和の魅力が伝わる、重厚感のある家
古き良きものを感じとれる家をつくりたいとお考えだったお施主さま。建築家の傳寶さんは「素材のもつエネルギーを感じるような重厚感あふれる家」を実現するため、無垢の木や土塗り仕上げの外壁など素材にこだわったという。角地かつ変形敷地という敷地の条件を最大限に生かした空間構成で、暮らしやすい家ができた。

子育てと旗竿地の問題に回答を!3階建て×スキップフロアの家
採光や開放感の確保が気になる敷地。でも、駅徒歩圏で子育てや教育を含めた周辺環境は理想的。そんな土地に家を建てることになったSさんは、頼れる専門家を求めて建築家・近江利雄さんに相談する。近江さんの提案は、木造3階建てのスキップフロアの家。採光と共に空間の一体感を大切にした開放的な住まいには、さすがのノウハウが盛りだくさん!

コンパクトな建物に上質な空間 畑の中に佇むシンプル平屋
畑のなかにひっそりと佇む平屋の家。コンパクトでありながらも、細部にわたる上質さと、抜群の暮らしやすさを兼ね備えた家をつくったのは、とくら建築設計の松尾道生さん。「暮らしをつくる」建築家、松尾さんの家づくりの真髄に迫る。

