
元麻布
設計者情報
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

ニューノーマルの住宅改修
既存住宅の内装改修計画。 これまで私たちがスタンダードだと疑わなかった世界が、未曾有のウィルスの影響により、1年足らずであっという間に変わってしまった。満員電車に乗って通勤し、帰宅する。週末は家でゆっくりする。当たり前だった生活のサイクルは一変し、これまでの世界のバランスが一気にひっくり返ったような感覚だ。 ほんの少しの変化で、これまで当たり前だと思っていたこと、価値を疑わなかったものが無価値になってしまうこともある。世界は、ものすごく繊細なバランスで成り立っていたのだ。 住宅は、夜帰宅して寝る所、週末でくつろぐところから、仕事場でもあり、家族との生活の場でもあり、就寝の場でもあり安らぎの場でもあるというマルチな役割を担う存在へと変貌している。各人により住まいに求めるものもますます多様化し何が、住まいにおけるノーマルなのかが揺らいでいる。 今回の改修計画では、既存の住宅の形状は決まっていたので、それらを生かすことと、長時間住まいに滞在することを前提としてスタートした。 「つなげること・きりはなすこと」 従来の建築的な手法として1つの素材や1つのルールで全体をまとめ、ある世界観を作り出す。そうした手法だとどこにいても同じような空間となってしまうと考え、なるべく異種の素材を使用しながらも、それらが馴染むように質感や色調を調整することで、個々は別々だが、なんとなく全体の統一感があるというようなコントロールの方法を考えた。 具体的には、なんとなくまとまりが出そうな各スペース同士で、床は繋げるが、壁は袖壁を強調して見切り材を入れてみる、壁は異素材だが、天井の素材は連続させる、繋がっている場所だが角にミラーを入れて空間を切り離す、別々の部屋だが照明は繋がっている等。 壁、天井、床、照明、見切り、建築的な種々のパラメーターを繋げたり切離したりしながら計画する。木質、磁器質、塗装の質感、それぞれの素材の質感と配置を調整し全体の統制はとりながらも、個々のスペースで異なる様相が表れるような空間計画を試みている

サカイデザインネットワークの写真集2

光のラグジュアリ
団地の一室の改修である。 元々この部屋で暮らしていたクライアントから、東欧での数年間の生活を経て再び日本に戻ってきたことを機に改修の相談をいただいた。 かねてより南と北の両面に窓をもつ団地の形式には豊かさを感じていた。とくにこの部屋は5階で光と風が気持ちよく通り抜け、まわりには視線を遮るものもなかった。 そこで「光のラグジュアリ」をテーマに異なる反射率の素材を組み合わせることで、豊かな光を受け止めふとしたときに光のうつろいを感じられる空間を構想した。 団地の形式上、玄関を入った正面の軸が南北どちらの窓からも一番遠く、一般的に最も暗い場所になる。そこで玄関の正面に廊下を新しく設け、空間の骨格とした。そこは反射率の高い象徴的なタイル床の、光を反射させる空間である。廊下は滞在する場所ではないがどの部屋からも目に入る空間なので、その床に光を反射させ生活の中に自然な形で揺蕩う光を存在させたいと考えた。 「光を反射させる」廊下に対し、部屋の壁は東欧のアパートを参照しカラフルながらも彩度の低い色の穏やかで落ち着きのある「光を受け止める」面としている。床も部屋ごとに素材を変えているが、廊下とは対照的な「光を吸収する」素材を選定した。 「光」と「色」の掛け合わせで、場所ごと、時間ごと、季節ごとに空間の表情は変わっていく。日常の中に落とし込まれる光の移ろいは新しい発見をもたらし、日々の暮らしを豊かにすると考えている。

陰の住居
住居とは家族の関係や感情の様々な波を受け入れる器である。そうであれば、住居はむしろ陰に支配されている方がいいのではないか。陰はいいときも悪いときもそっとそこに佇み、目立たず、主張せず、ただ家族を見守る。そんなことを考えながら設計した住居である。 ほぼすべての壁は凹凸のある黒い塗装で仕上げられ、外から入る光を少しだけ拡散する。この光のあり方は、日本の伝統的な家屋の光のあり方に通ずるものがある。明快な光ではなく、鈍く柔らかい静かな光の質である。日本的な住居の光の質と様相を、鉄筋コンクリートでできた近代的なマンションの中で表現できないかと考えた。 築40年を超えるマンションで階高が低かったため、天井は張らずコンクリートをむき出しにして、天井の高さを確保している。梁も大きく、コンクリートの存在感が強かったため、新しく設ける要素が均質なものではコンクリートの量塊感と時間を経た強さに負けてしまう。そこで様々な素材を散りばめることで、乱雑な調和を生み出すことを狙った。木、石、アルミ、鉄、左官といった材料を使用している。 リビングの一画に子供部屋を配置し、ガラス張りの部屋とすることで、空間の広がりを確保している。そのガラスは、子供と両親の関係調整装置となる。ブラインドとロールスクリーンで視線を遮ることができるため、プライバシーを確保したいときには閉じ、空間を共有しながら部屋で過ごしたいときには開けることができる。壁で囲われた「個室」といった、単一の関係性しか生まない部屋のあり方ではなく、その時の気持ちや気分によって関係性を変えられる仕組みをつくった。

azabu A-HOUSE
東京都港区内の、ビルの3層から5階をリノベーションして住宅として利用する計画。 天井が高いビルの特徴を最大限活用する計画とします。ソファとカーペットで構成されたリビングの床高さを、その他のフローリング床から30cm下げることで、「小下がり空間」とします。そして、3階とは思えない豊かな庭をバルコニーに設けることで、まるで背の高い木々に囲まれているかのように感じるリビングを実現します。さらに、バルコニーの木々は、隣地の豊かな緑を借景とすることで、奥行を持ち、都会の喧騒を忘れさせる風景となります。 また、リビングに繋がるダイニングキッチンには、リビングと面する壁に大きな開閉式トップライトを新たに設け、通風と採光を確保します。フロア全体が風と光で満ちる心地の良い場所が生まれました。

浦賀の住宅
京急線の終着駅にあり、古くから港町として発展してきた浦賀の街にある、中古マンションリノベーションの計画です。 壁式コンクリート造の建物では、住空間の中にコンクリートの壁や梁が横断し、間取りの変更に大きな制約となります。この硬く重いコンクリートの存在を否定することなく、地形として活かすことで最小限の操作で住空間を構成していくことを考えました。 大まかな間取りをコンクリート壁に委ね、不足分を補うように梁下に高さを抑えたシナ合板の家具を配置しました。家具は梁と無関係に配置すれば空間を分ける「仕切り」となり、梁に沿って配置すれば空間を分断する「間仕切り」となります。 その結果、耐力壁のない側はゆるやかに仕切られた大きなワンルーム空間となり、風と光が住戸の奥まで届くようになりました。一方で耐力壁で仕切られた側は自然と個室に分断されるため、水周りや寝室などの機能を配置しています。ワンルーム空間は冗長的にならないよう、床段差や造作家具、袖壁などで変化を与えています。 デスク付きのWICやインナーバルコニーと玄関には、居場所を想起させるものとして造作ベンチを置き、50㎡の住空間を全体的に使える状態をつくりました。 硬い地形に対し、柔らかい家具を挿入することで多様な性格の場を散りばめ、新たな地形をつくっています。その新しい地形を読み解きながら生活が行われる、環境のような住空間を目指しました。

国分のパーゴラ

YUKINOSHITA-S
鎌倉の古い民家の改修。 初めて現場を訪れた時、趣があるが傾きもある、そんな誇りと限界の間にあるような民家の姿があった。 求められたのは大きな音で音楽の流せる飲食店と、2人暮らしの住宅。 防音も断熱も無い既存家屋の雰囲気を守りながら、高いスペックの防音性能と断熱性能の両立が課題だった。 1階飲食店では、床を解体し剥き出しとなった土部分に、基礎の代わりとなっている大谷石に緊結するよう配筋した土間コンクリートを施工し、耐震性を高めると共に、飲食店としての天井高と清潔感を確保した。また、壁は全面を有孔の木製ベニヤ貼りとし、吸音性能に木のあたたかさをプラスした。 防音、断熱の弱点となる開口部は、外観を印象付ける既存の木製建具はそのままに、内部に防音サッシを設けた。玄関には防音サッシで挟まれた風除室を設け、外観の優しさを持ったまま、防音と断熱を実現した。 住居となる2階は既存の柱梁がそのまま見えるワンルーム空間とし、断熱材を追加した壁は既存の柱梁に負けないテクスチャーとするべく、ボードのパテをそのまま見せる土着的なアートのような荒々しい仕上げとした。 永く街並みの一部となってきたこの民家の雰囲気は保ちながら、内部には新しい営みと生活が宿っている。









