
モットーは施主様のキャラクターに合う家作り
心地よく、長く住まい続けられるために
住居とカフェと事務所を敷地内に建てる
すべてを満足させる、基本プランとは?
事務所開設当初は一般住宅の設計がメインだったが、徐々に店舗の仕事も増え、現在は住宅と店舗がほぼ半々の割合になっているそうだ。竣工したお施主様から次のお施主様を紹介して頂くことも多いという。
今回の作品は、広大な敷地に4LDK + café + officeの機能を持たせた建物を建てるというものだ。つまり、住宅と店舗の両方を手掛ける、yasuhiro sawa design office.の特徴を活かすことができるわけだ。施主様の設計事務所選びは、理にかなっていたのではないだろうか。
この作品が誕生した経緯を、ご紹介しよう。
代表である建築家の澤さんによると、施主様からの細かな要望はあまりなかったという。部屋数などの要件以外で要望された主な内容は、「リビングとcaféスペースは、建物から見える景色が良い位置に配置して欲しい」というものだった。
この要望に対して、澤さんはどのようなプランを生みだしたのか。
まず、土地が持つ特徴を詳しく調査した。敷地は南北に長い長方形で、すぐ前には道路と電車の線路がある。さらにこの敷地はとある名所に近く、道路を多くの方が往来し、電車にも観光で利用する人がたくさんいることがわかった。
そこで澤さんが考えた基本プランは、
・南北に長い敷地に沿って細長い建物の形状とする
・建物からの景色が良いだけでなく、電車の中から建物を見た時も景色が良いものにする
・居住空間はプライバシーの確保に留意し、道路や電車からの視線をできるかぎり遮る
というものだった。
では実際に、このプランをどのように形にしていったのだろうか。
次章で、その詳細をご紹介しよう。
大きく見える建物で視線を集めるが、
周囲と調和し、違和感のない外観とする
まずはこの外観について、どのような点に留意したのかを澤さんに聞いた。
「もっとも配慮したのは、周囲との調和です。横長で総2階建てなので、普通の外観だととても圧迫感があるものになってしまいます。なので、電車の車窓からでもすぐにわかる特徴的な建物なのだけれども、周囲に溶け込んでいるような外観を目指しました」。
具体的に見てみよう。
敷地まわりの街並みや景色などを加味し、外壁は少しずつ変化していく材料として板貼を採用した
しかし、それだけでは圧迫感を打ち消すことができない。そこで2階部分の外壁を平面ではなく、凹凸をつけて変化をもたせることで、圧迫感を感じにくいようにした。この飛び出している部分は、建物の奥行きがあまりないため、浴室などの必要な床面積を確保するという実用的な役割も担っている。
また、窓の大きさや配置を変えることで、外観に変化をつけている。こうした様々な工夫で、“圧迫感がある、とても大きな建物”ではなく、“風景に溶け込みながら、少しだけ目立つかわいらしい建物”に、変化させたのだ。
居住空間のプライバシーの確保については、どのような工夫がなされているのだろう。
カフェを訪れるお客様や、敷地の前を通る人たち、そして電車の乗客からの視線を遮るために、カフェを1階にして住居部分を2階に配置した。
しかしこれだけでは、視線を遮ることはできない。そこで窓の位置や大きさを変え、ベランダの柵の高さを少しだけ高くすることで解決した。澤さんによると、ベランダの柵の高さを決める際にはかなり気を配ったという。柵が高すぎると、せっかくのベランダからの眺望が台なしになってしまう。低いと、柵越しにリビング内部が見えてしまう。その絶妙な高さを見つけることで、眺望と視線のカットを両立させたのだ。
その他にも、数多くの工夫がなされている。ぜひ、写真の説明文と図面をご参照いただきたい。
施主様やご家族が居心地の良い家でないと
長く快適に住み続けられないと思います
施主様によると、友人やカフェのお客様から、「建物がとても素敵だ」、「道路から見るととても大きいが、なぜか前からあった建物のように周囲に馴染んでいる」などの好評価を頂いているという。
また、施主様は最初に基本プランを見た時から「住みやすそうな家だ」と感じていたが、実際にとても快適で満足しているそうだ。
なぜ、このように高い満足度を得ることができたのかを澤さんに聞いた。
「ぼくはクライアントのキャラクターに合った建物を作りたいと思っています。単に見た目が良い、お洒落な家を作ることは、実は簡単かもしれません。でも、クライアントご家族が住み続けた時に、自分たちに合った家でなければ愛着を持ってもらえないかもしれません。それはとても悲しいので (笑) 、ぼくは、クライアントご家族が心地よく、長く住まい続けられる家を作りたいと思っています」。
「キャラクターは、性格や趣味や志向など、さまざまな要素で構成されると思います。なのでぼくは、クライアントご家族がどのような人なのかを、できるだけたくさんの対話を通じてできる限り理解するように心がけています。
実際に、今回の作品の施主様はとても穏やかだが、こだわる点には妥協しない方だったそうだ。そこで突飛なデザインではなく、穏やかな外観や内装を選択した。一方で、こだわる点については徹底的に考え、さまざまな工夫を凝らしたそうだ。
こうした澤さんの基本的な考え方に共感した施主様が、実際の作品に満足し、次の施主様を紹介してくれるのだろう。
さいごに、施主様の事務所が離れの小屋になった理由を澤さんに聞いてみた。
「これはぼくの直感です。建物とつなげてさらに大きな母屋にする案も考えましたが、大きな建物の前に、ちいさな小屋が見えるのはとても可愛らしいなと考えました。クライアントのキャラクターにも合うと思いましたし、敷地も広くて余裕がありましたので(笑)」。
理詰めだけではなく、遊び心も持ち合わせた建築家との出会いは、時に想像を超えるプランが生みだされることもある。
興味を持たれた方は、いちどコンタクトしてみてはいかがだろう。
基本データ
| 作品名 | K _ house / café |
|---|---|
| 所在地 | 滋賀県大津市 |
| 敷地面積 | 370.59㎡ |
| 延床面積 | 158.44㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 予算 | 2000万円台 |
撮影:Morimoto Yutaka
設計者情報
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