
築古民家をサスティナブルな人気物件に。
設計の力でTotal winなリノベーション

李 孝哲
イ ヒョチョル
株式会社ムービング・アーキ一級建築士事務所
東京都 渋谷区
「人の生活に寄り添った住まいづくりを」という強い想いから、独立し個人事務所を開設。 リフォーム、住宅、マンション設計と数々の物件を手がけ、2013年に株式会社ムービング・アーキ一級建築士事務所を設立。 現在は、注文住宅から、大手デベロッパーのマンション、商業施設など幅広く携わっている。 外国人建築家として日本を客観的に捉え、日本文化を軸にした住まい作りに専念している。
人気エリアに立つ築古民家を
店舗用にリノベーション
ムービング・アーキ一級建築士事務所の李孝哲さんが設計したSHIMOUMA-112は、そんな人気エリアの目抜き通り沿いにある。クライアントの不動産会社が計画していたのは、築約30年の民家を買い上げ、店舗用にリノベーションしてテナントを付けてから売却するビジネス。そのリノベーション設計の依頼が李さんに舞い込んだ。
限られた予算で効果的なリノベーションを行うため、また必要以上に廃材を出さないため、李さんは建物の骨格をできるだけ再利用することにした。
一方、店舗としては少々暗い印象だったことから、アースカラーの外壁はシンプルなホワイトに塗り替えて明るく清潔感のある印象に。
加えて、階段は外階段を新設し、1階と2階それぞれにエントランスを設置。
「このエリアの家賃は、安くはありません。1階と2階をまとめて借りるのはテナントの負担が大きいかもしれないと考え、外階段で各フロアを独立させて2つのテナントが使えるように計画しました」と李さん。この配慮は、すっきり広々とした内部空間を生み出すことにもつながった。
リノベーション完了後、早々にテナントが決まったこのSHIMOUMA-112はどのような空間なのか、詳しくご紹介していこう。
明るく開放的な1階、落ち着く2階。
シンプルながら配慮も細やか
立地的に飲食店が入ることも十分に想定されたため、厨房になりそうな奥のスペースだけは、床を耐水性が高くメンテナンスしやすいシート張りとした。厨房は水が飛び跳ねるし、薬品や掃除器具を使ってガシガシ掃除できたほうがいいからだ。
こうして1階は、明るくすっきりとしたシンプルモダンな空間に。あえて見せた木の柱や筋交いがアクセントになり、洗練と温かみのバランスがちょうどいいオールマイティな空間となった。
対して2階は、1階とはまったく印象が異なる木の空間。こちらも飲食店が入っても対応できるよう、床の一部は水まわりに適したシート張り。ほかはフローリングで、旧家屋の柱や筋交いだけでなく梁などの構造材も表に出ており、とにかく木の存在感がある。また窓は控えめに計画されており、適度なこもり感と木の温もりが心地いい落ち着ける空間となっている。
そんなSHIMOUMA-112にいったいどんな店舗が入るのか。答えは、美術品を扱うギャラリー。しかも1階はオープンギャラリー、2階は商談ルーム兼オフィス兼倉庫と、建物をまるごと使うことが決定した。
汎用性の高さが光る、
洗練されたサスティナブルな建築
あらゆる可能性のあらゆる使い勝手に思いをめぐらし、汎用性の高い魅力的な空間をつくり出すには知識、経験、高度な設計スキルの全てが要る。そのうえ「人気物件」になるには、借主や顧客を惹きつけるデザイン力も欠かせない。
飲食店にも対応できるようにと計画した空間が、ギャラリーオーナーの目に留まったという事実。これは、李さんがクライアントと検討を重ねてテナントの業種・業態を細やかにイメージしつつ、どんな業種にとっても使いやすいフレキシブルな空間を計画したことのあかしでもある。
「家だったら年を取れば好みも変わるし、家族構成も変わります。店舗も同じで、テナントさんは変わる可能性がありますし、テナントさんが変われば使い方も変わります。時代とともに顧客の好みも変わるでしょう。ですから、家でも事業用の建物でも、変化に柔軟に対応できる建築をつくることが私の仕事だと思っています」と李さん。
環境問題への意識がより高まっている昨今、建築の世界でも、一度つくった建物を長く使うサスティナブルな考え方がトレンドになっている。その点、飲食店でも、物販でもオフィスでも使い勝手がいいSHIMOUMA-112は、理想的な建築なのではないだろうか。
魅力的な空間はテナントも嬉しいし、訪れる顧客にも楽しい時間をもたらす。また多業種のテナントに対応できれば物件としての資産価値も高まり、オーナーにとっても願ったりかなったり。李さんは築古の民家を、設計の力でTotal winな建築に生まれ変わらせたのだ。
間取り図
基本データ
| 作品名 | SHIMOUMA ‐112 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都世田谷区 |
| 敷地面積 | 95.51㎡ |
| 延床面積 | 125.1㎡ |
| 予算 | 〜2000万円台 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

土地探し・施工・外構・家具まで手がける ユニークな設計事務所が創造した二世帯住宅
宮城県仙台市に、株式会社杜設計というユニークな設計事務所がある。その特徴は、土地探しから施工、庭づくり、家具製作まで手掛ける点にある。今回ご紹介する作品も、まさに土地探しから庭づくりまで関わったものだ。施主様から「不満や後悔が一切ない」と高い評価を受けたこの作品を例に、そのこだわりをご紹介しよう。

実家も勤務先も“お隣”!子どもたちがのびのび過ごせる家
建築業に携わるご主人とその奥さま+小さな子ども3人、一家5人が仲良く暮らす家。若いご夫婦が「子どもたちの成長をずっと見守っていける、心のかよい合う住まいを」と願い、細部にわたり杉山靖彦さんと話し合いを重ねてできたのがこちらのお宅だ。施工にはご主人やご主人のお父さまも参加。家族みんなが心地よく暮らすための工夫が随所に施された、こだわりの家を紹介する。

“スープの冷めない”程よい距離感。 二世帯住宅における、ひとつの最適解。
県道から坂道を上った小高い住宅地に佇む、落ち着いた雰囲気のL字型の住宅。ここは、みのわ建築設計工房の箕輪裕一郎さんが設計した自邸「大泉寺の家」だ。「二世帯の距離感」をテーマに、自身が生まれ育った家を建て替え二世帯住宅としてプランニング。さて、箕輪さんが導き出したその「距離感」とは。そして、家を設計する際にいつも心がけていることとは──。

築43年のマンションを一新。 やわらかな発想で実現した豊かな環境
建築家の小野さんが70年代の建築にこだわって物件を探し、見つけたのは1977年築のマンション。建物の丈夫さは申し分なかったが、自宅として快適に暮らすためには多くの問題を解決しなくてはならなかった。大規模リノベーションによって生まれ変わった空間を紹介しながら、「豊かな環境」について考える。

4階建ての3階なのに天井から光が降り注ぐ 温かな雰囲気のLDKを備えた鉄骨造の家
建物がひしめく地域に家を建てることにしたお施主さま。可能な限り広い家にするため、4階建てをご希望だった。建築家の小林さんは、LDKをあえて3階に置くことで高いプライバシー性と豊かな採光を両立。温かみが感じられる、光にあふれたLDKの秘密は4階建ての3階にも関わらず設けられた天窓にあった。

【注文住宅の事例集】シンプル_一戸建て_神奈川_秋山怜史さん
建築はそもそも、外部環境から人を守るために発達しました。 暑さ、寒さ、風雨。これらからいかにして人を守るか。 しかし、守るだけでは心地の良い空間は実現できません。 そこには、守りながらも、いかに外に対して空間を開いていくか。ということが求められてきます。建築はいつもそのせめぎ合い。気持ちの良い外部空間をとりいれるための試行錯誤は常に行なわれています。

プライバシーと採光を叶える「ずらし」の妙 個の時間も、家族の団欒も楽しい2世帯
住宅密集地での二世帯住宅づくりは、プライバシーの確保、さらには採光・通風など解決すべき課題は多い。その難問を様々な手法で見事に両立させてみせたのは、顧客との「対話」を通じて価値観や家づくりのプロセスを「共有」することを大切にしている建築家、河野有悟さんだった。

歴史が刻まれる農家住宅の「和」と若い世帯が居心地のよい「モダン」を融合
「建築は機能や便利さ以外にも、家族とのつながりや自然を前にして感じることなど、楽しさがたくさんあります」と建築家・高瀬さん。そんな家づくりへの思いが十分に伝わってくるリフォーム事例を紹介しよう。暮らしの「実」の部分と、住まいに刻まれてきた「歴史」、その両面を大切に設計されている。

洋風な造りに和風の落ち着き。和洋の良さを生かした大満足の家
二階へ上がると、思わずあっと声を上げてしまうほどの天井高。スギの床が素足に気持ちよいA様宅は、今年の春に完成したばかり。木の香りがいっぱいに広がるステキなお宅は、「大満足です」とお施主様がおっしゃる、素晴らしい和洋折衷の家でした。








