
閉ざされた外観から一転。
邸内におおらかな空が広がる「白空の家」

大塚 泰子
おおつか やすこ
ノアノア空間工房
東京都 港区
■私の目指す空間つくりとは■ 1. 五感に響く詩的空間をつくること 2. 機能性とデザイン性を兼ね備えた空間をつくること 3. 自然を取り入れながら優しく居心地のよい空間をつくること 「真剣に考え、真剣に取り組み、真剣に楽しむ」 「建主、工務店と共にいい建築、いい住宅をつくるぞ、という共有の意識を持つ」 「関わる全員がhappyになる」 そんな経験の場所、記憶の場所をつくりたいと思っています。 いい住宅ってこういう経験と記憶からスタートして建主の暮らしを豊かにしていくものです。 さあ、さあ、素敵な住まいづくりをはじめましょう!
プライバシーを守り、
印象的な外観をつくる“目隠し塀”
敷地は南と北が道路に面する環境で、プライバシー対策は欠かせない。しかし、“内と外のつながり”を大切にした大塚さんの家づくりに魅力を感じていた施主さまは、「カーテンを閉めないで暮らせる家がいい」という要望をもっていた。
「外から見られそうな窓はカーテンを閉めますよね。それではせっかく窓があっても、内と外のつながりが分断されてしまいます」と話す大塚さん。その課題を解決するために、大塚さんがよく用いるのが、敷地を大胆に囲む“目隠し塀”だ。
この家でも、まずは光を採り入れたい南面に2階までの高さがある白い目隠し塀を設置。塀の内側にはテラスを設け、家そのものは南の道路から少し奥まった場所に建てた。さらに、隣家が迫る東西と採光を望みにくい北は、白塀や家の白い外壁で囲んでしまう。そうすると、「閉じた白い箱」を思わせる印象的な外観ができあがる。
とはいえ、大塚さんは「閉じ過ぎると無表情になってしまうので」と、南の白塀に植物などを飾れる出窓タイプの小窓をいくつか設けた。
小窓を覆う白いエキスパンドメタル(網目の金属)はレースカーテンと似て、昼は外から中の様子を伺うことができない。反対に日が落ちると、家の明かりと出窓に置いた植物のシルエットが浮かび上がり、幻想的なアートのよう。わずかにもれる温かな光とクールな白壁の対比が美しく、ここに住む家族の「幸せな暮らし」を物語っているように見える。
ハイサイドの大窓とテラスがもたらす、
屋外のような開放感
一番のメリットは、邸内のどの窓も、外部の視線を気にせずオープンに使えることだ。実際、邸内に足を踏み入れると、どこにいても青空が見える開放的な造りに驚く。
施主さまが望んでいた「カーテンを閉めないで暮らせる家」の魅力を最も満喫できるのは、テラスに面した1階のリビング・ダイニングだろう。テラス側が吹抜けになったこの空間は吹抜け上部にも大きなハイサイド窓があるのだが、白塀のおかげでプライバシー確保は万全。
また、テラスへ出る折れ戸を全開すればテラスと室内はひと続きになり、空間の楽しみ方が一気に増える。「私は家の中だけでなく、外部空間も暮らしの一部になると考えています。こういうテラスがあると外で食事をしたり遊んだりでき、暮らしがとても豊かになると思います」と大塚さん。
2階の主寝室と子ども室も、空を感じることができる空間だ。この2室は吹抜け上部の窓に向かって並んでおり、いずれも吹抜け側は腰壁になっている。そのため、部屋に入ると正面の窓に広がる大きな空が目に飛び込み、抜群の開放感。階下のリビング・ダイニングも見下ろせるが、腰壁の上にはブラインドがあり、来客時などはブラインドを閉めてプライバシーを守ることもできる。
それにしても、四方を囲われ外部をシャットアウトしたような外観をもつこの家に、これだけ空が近い住空間が広がるとは誰が想像するだろう。そのワクワク感も、ここに住むことで得られる大きな喜びといえるだろう。
奥行きと広がりを生む、“抜けと透かし”のテクニック
その好例が、この家の和室だ。玄関を入ってすぐの和室はリビング・ダイニングの奥に位置し、しかもその間には2階への階段もある。普通に考えたら日の当たらない、閉鎖的な部屋になりそうだ。
だが、大塚さんは和室も屋外とのつながりを得られるよう、リビング・ダイニング側に壁をつくらず障子の3枚引き戸にし、階段はオープンなデザインで仕上げた。
大塚さんいわく、「これは、私がよく用いる“抜けと透かし”の手法です。抜けは開放感、透かしは空間の奥行きや、『この先に何かある』という期待感をもたらす効果があります」。和室を客間として適度に独立させながら、階段の抜け感や障子の透け感によってつながりや奥行きも生み出したというわけだ。
玄関から和室へ入る引き戸も、“抜けと透かし”の手法が用いられていて面白い。引き戸は一部を丸くくり抜き、全面に麻を張っている。こうするとくり抜いた部分は麻だけになり透け感が生まれ、「この先に部屋がある」というつながりを感じられる。
大塚さんはこの家を「白空(はっくう)の家」と名づけた。その由来が白い外観と、どこにいても空に手が届きそうな住空間であることは想像できるが、「白空の『空』には吹抜けやくり抜いた和室の引き戸などの、抜け、空き、余白という意味も込めています」と、ニコニコしながら話す大塚さん。その名の通り爽やかな空に抱かれた懐の深い空間は、住む人の心まで豊かにしてくれそうだ。
間取り図
基本データ
| 所在地 | 東京都国分寺市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 116.66㎡ |
| 延床面積 | 93.2㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども1人 |
| 予算 | 3000万円台 |
設計者情報

大塚 泰子
おおつか やすこ
ノアノア空間工房
東京都 港区
■私の目指す空間つくりとは■ 1. 五感に響く詩的空間をつくること 2. 機能性とデザイン性を兼ね備えた空間をつくること 3. 自然を取り入れながら優しく居心地のよい空間をつくること 「真剣に考え、真剣に取り組み、真剣に楽しむ」 「建主、工務店と共にいい建築、いい住宅をつくるぞ、という共有の意識を持つ」 「関わる全員がhappyになる」 そんな経験の場所、記憶の場所をつくりたいと思っています。 いい住宅ってこういう経験と記憶からスタートして建主の暮らしを豊かにしていくものです。 さあ、さあ、素敵な住まいづくりをはじめましょう!
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

吹抜けがなくても開放感は生み出せる。毎日楽しい、三角屋根のかわいい家
5LDK・2階建てのH邸は、平面図を見ると至ってベーシックなプランに思える。しかし実際に訪れると、楽しく、気持ちよく暮らせるポイントが満載。どんな条件でも空間に豊かさを加えてくれる、菅家建築計画工房ならではの設計の魅力がよくわかる。

豊かな緑を絵画のように楽しむ。 環境を活かし切る、のびやかな住まい
鎌倉の緑深い住宅街に立つA邸は、緑を絵画のように楽しむ ピクチャーウインドー、ヴィンテージ感漂うデザインなど何気ない日常をランクアップさせる要素が盛りだくさん。 株式会社desus(デサス)建築設計事務所(以下desus)ならではのセンスあふれる設計で、友人を招きたくなる魅力的な住まいとなった。

《集合住宅の事例》2階がある!?一戸建て感覚の空間が楽しい!
マンションでは珍しい一戸建て感覚の間取りを、建築家・谷内田章夫さんは法規上の制約を逆手にとって実現。しかも、谷内田さんが手がける集合住宅はメンテナンスの手間やコストが最小限ですむという。住む人はもちろん、オーナーにも魅力的な空間の秘密とは?

祖父が設計した家が新たな形で生まれ変わる メリット多数の「増改築」という選択肢
高校時代からの友人だった施主から、祖父が設計したという旧家の建て替えの相談を受け た建築家の鈴木隆介さん。新築のプランをいくつも作ったにも関わらず、あえて手間もか かり難易度も上がる、既存の建物を活かした「増改築」プランも提案。施主のことを第一 に考えた増改築とは?

遊ぶ、眺める、家族で家を楽しみ尽くす、中庭の存在とは!?
この家に住むIさんは、造園の仕事をしていたため、緑の楽しみ方をよく知っていました。子どもたちが思いっきり走り回れる芝生の広場、お風呂につかって眺める坪庭、自分で手入れする前庭。家族と暮らす新たな住まいはたくさんの緑で彩られていました。

【注文住宅の事例集】シンプル_一戸建て_神奈川_秋山怜史さん
建築はそもそも、外部環境から人を守るために発達しました。 暑さ、寒さ、風雨。これらからいかにして人を守るか。 しかし、守るだけでは心地の良い空間は実現できません。 そこには、守りながらも、いかに外に対して空間を開いていくか。ということが求められてきます。建築はいつもそのせめぎ合い。気持ちの良い外部空間をとりいれるための試行錯誤は常に行なわれています。

大きく広がる眺望を室内からもテラスでも。 贅沢な大開口が引き立つ、シンプルな家
見晴らしのいい敷地に、利点を最大限に生かした家を建てたいとご要望を受けた建築家の牧野さん。提案したのは、ご要望を叶えることはもちろん、使いやすい家事動線や室内の居心地のよさなど住まいに関するあらゆることにこだわった家だ。眺望に重きを置きながら、それだけではない豊かな暮らしを実現した。

まるで公園!広い庭とテラスで 内と外がつながる、開放的な住まい
外から見るとまるで公営の公園のように見える、南津軽郡のK邸。「敷地全体を使った地域に開かれた開放的な住まいにしたい」というKさんの要望を叶えたこの住まいは、随所に外部空間と内部空間をつなぐ工夫がされている。家のどこにいても外が感じられるこの開放的な住まいを形にしたのは、Kさんの中・高校時代の同級生であるmizuiro architects 一級建築士事務所、葛西瑞樹さん。その家づくりの詳細について、お話を伺った。

片流れ屋根の下、家族がひとつになりながら プライバシーを保って暮らせる住まい
開放的で、同じ空間に家族皆がいると感じられる家が欲しい。けれど子どもたちのプライバシーは保ちたいと考えられていたお施主さま。購入したのは2方向に見える山の風景が美しい、山裾にある土地だった。建築家の中川さんは、恵まれた環境を生かしつつこれらの希望を全て叶えた家をつくり上げた。
