
モダンと暮らしやすさを両立した、
自然と人が集まる家
モダンと暮らしやすさを両立した、自然と人が集まる家
J邸は2重の壁面で構成されており、外側にあたる道路の面した白い壁面が、まるでアルファベットの「Y」の字のようなラインで切り込まれている。その角度は鋭角すぎず、また鈍角すぎてもいない絶妙なラインを形成している。その壁面の奥にブルーグレーに塗られた建物が見える。白とグレーがかった青のコントラストも実にモダンで美しい。かといって不思議と派手な印象は感じられない。まさに「室内には抜けがあって気持ちの良い空間があること。さらに目立ち過ぎないが個性ある家」を見事に表現しているのだ。
前述のように、J様は「お子さんと遊べる庭があり、室内には抜けがあって気持ちの良い空間があること。さらに目立ち過ぎないが個性ある家」が希望であった。今回の家造りはご主人の希望に沿って行われたという。J様の希望とこだわりを、渡辺さんはどのように形にしていったのだろうか。
「2週間に1度、プレゼンテーションとヒアリングを繰り返すことで、J様のご希望をひとつひとつ聞き出し、少しずつではありますが形にしていきました。J邸を建てるにあたり、敷地内にクルマ2台分の駐車スペースとお子さんたちの自転車を置く場所を確保する必要がありました。さらに、限られた敷地面積においてもお子さんの遊び場所を確保するため、お庭をL字型にすることをご提案したのです」
結果として、J邸の庭はL字型となった。この庭はウッドデッキとなっている。大型のサッシを採用したことにより、開放感があることはもちろんのこと、室内からお子さんたちが庭で遊んでいる姿が見られるので安心だ。と同時に、外側の白い壁面にもプライバシーに配慮しつつ、開口部が設けられている。お子さんたちが庭で遊んでいるときは、J邸の付近を通る人にもにぎやかな歓声が聞こえるはずだ。そしてこの開口部は、J邸のあちこちに効果的に配されており、J様一家はそこに暮らしていることをさりげなく周囲に伝える役割も担っている。
「外壁の開口部と、室内に吹き抜けを設け、気持ちの良い空間を実現しました」
外側の壁は、壁面の高さはもちろんのこと、斜めにカットされた外壁の角度には細心の注意が払われた。外側の壁が建物を完全取り囲んでしまうと、要塞のような重厚感があり、周囲の景観に対して圧迫感を与えかねない。かといって壁面の高さを下げてしまうと、プライバシー保護の観点から心配な一面もある。そこで、ベストな角度を割り出すために綿密な打ち合わせが行われた。さらに室内にロフトを設けることで建物全体の高さが増し、室内にも段差をつけることで、より高低差が生まれる造りとなった。
気持ちの良い空間を実現するべく、室内と吹き抜けと外壁にも密接な関係がある。この切れ込みは南東の方角に向けられている。これは開放感を演出するためだけでなく、同時により多くの太陽光を室内に導く役目も担っているのだ。その結果、冬場でも日中はエアコンがいらないほど室内は暖かいという。夏場も、随所に配置された開口部に風を通すことで快適な空間になるそうだ。
気持ちの良い空間づくりは浴室にも及ぶ。本来であれば庭を愛でながら入浴したいところだが、あまり開放的すぎても抵抗があるだろう。そこで明るさを確保するため、バルコニーにトップライトを設置。浴室と洗面所にも光を取り込むような配慮がなされている。このように、渡辺さんがきめ細やかな提案を積み重ねたことで、建物全体に気持ちの良い空間を実現することができた。では、J様のもうひとつの希望はどのように形にしていったのだろうか。
「J様の個性を尊重しつつ、奇をてらわず、相反する希望を形にしました」
J邸の印象を一言で表現するなら「モダン」だ。室内は白とダークブラウンを基調としてシックにまとめられている。ダークブラウンも、どこか暖かみが感じられる色合いだ。この色調はご主人の希望でもあったという。
あくまでも家族4人で暮らす家。奇をてらった空間では住みにくい家になってしまう。お子さんがプールで遊べるようにしたいし、布団や選択物を干すことも考えなくてはならない。その反面、J様の希望でもあるモダンな暮らしも追求したい。さらには外からどう見えるかも重視したい。これらの希望は相反するものであり、一見すると矛盾しているかもしれない。さまざまな希望や要素が複雑に絡み合い、絶妙なバランスで成り立ったことは、J様一家の感性と、建築家である渡辺さんが共同作業で生み出したひとつの「作品」といえるだろう。試行錯誤しつつも、結果として理想の家ができあがったことで、J様も非常に満足しているようだ。
事実、渡辺さんからも「J様より、明るく開放的で住みやすい家であり、人を呼ぶことが増えたと仰っていただきました」というコメントをいただいた。友人家族を呼んでBBQを開いたり、リビングから庭に掛けて雨樋を敷いて流しそうめんパーティを行うこともあるという。明るく、開放的なJ邸は、自然と人が集まってくる空間なのかもしれない。そして何よりJ様一家が休日を楽しんでいるように映る。J様にとって、こだわりの我が家はこの世に2つと存在しない自慢の城となったようだ。
間取り図
基本データ
| 所在地 | 愛知県 |
|---|---|
| 間取り | 4LDK |
| 家族構成 | 夫婦 |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | J邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

傾斜を生かし、ストレスなく暮らす。 広がる街並みや山々の絶景が楽しめる平屋
東京から群馬県高崎市への移住を考えたKさま夫妻。候補に挙がったのは、見晴らしは最高だが「ここに家が建つのだろうか?」と思うほど傾斜のきつい土地だった。建築家の松下さんはその課題をどのようにクリアし、絶景を楽しめる家をつくったのだろうか?

「45度回転」はメリット満載。多様な居場所と、のびやかな広がりを
家をつくるならぜひ欲しい、「広々としたLDK」。だがワンルームの大空間をどんなLDKにするかは、設計者のセンスやスキルで大きく変わる。では、建築家の片山正樹さんの場合はどうだったのだろう? 「大田区の家」から片山さんの設計の魅力を探る。

公園の借景が育む明るい生活 ほどよい距離感を実現した二世帯住宅
親子3代が明るく快適に過ごせる二世帯住宅を建てたいと思っていた施主のWさんご家族。 Wさんが設計を依頼したのは、自然と調和し、気持ちの良い暮らしを実現することに定評のある、m+h(エムアンドエイチ)建築設計スタジオの林さん。公園前という絶好の立地を上手に活かし、光と風、緑の借景をふんだんに取り込み、家族の気持ちも明るくなるような住まいを実現した林さんの家づくりに迫る。

1階は光あふれる生活空間、2階は大屋根に守られた完全プライベート空間。 里山の環境にとけ込む、平屋のような2階建て。
「建築」とは「人の居場所づくり」である。これが「のざき設計」の野崎さんの設計コンセプトだ。住まいだけではなく、オフィス・店舗設計でも同じで、住宅なら「住む人」、クリニックなら「クリニックにくる患者さんや働く人」。患者さんの場合は、待合室で暇な時間があるだろうから、雑誌立てを作って…など、その空間を使う人たちが、どうすれば気持ちよく過ごせるか、そんな思いを一番大切にしている。

ペットがいてもインテリアをあきらめない。 犬猫専門建築家がつくる大満足の住宅とは?
ペットと暮らす家をどうつくるかは、飼い主にとって大事なテーマ。でも、「ペットのための何か」を加えただけでは、人もペットも真の満足感を得られない。ではどうするか? その答えは、犬猫専門建築家・廣瀬慶二さんの自邸兼アトリエにあった。

ピアノを楽しみ、お昼寝も。家族をつなぐ吹抜けの広い土間
ハウスメーカーとの打ち合わせで「ピアノの部屋が欲しい」と要望したら、ピアノがぎりぎり入る小さな部屋を提示され、しっくりこなかったSさん。新たに相談を受けた建築家の松岡淳さんが提案したのは、なんとピアノを土間で楽しむという斬新なアイデアだった。しかもこの土間には、ほかにもさまざまな役割があるという。S邸の象徴的な空間となった大きな土間の魅力とは?

妻の名のバラがモチーフ、愛犬と愛車。愛ある家にやっぱり感動!
今でも週末になるとオープンカーでデートをするというIさんご夫婦。大好きな鎌倉で悠々自適に暮らす家の名は「Casa Ciero y Mar(空と海の住まい)」です。バラをモチーフにしたインテリアに囲まれ、愛犬とともに、海を眺めながら仲良く暮らしています。

室内を区切るものは壁ではなく、光と影。 美しい景色を、より魅力的に切り取る家
目の前に広がる田園風景と、裏山の間に位置するE邸。ハナトアーキテクツの保科陽介さんと堤理紗さんは、田園と裏山の空気感を繋ぐような家にしたいと考えた。異なる素材を使い分けて両者の特徴を入れ込んだ室内空間には、夏はひんやり冬暖かくと、快適に暮らせる工夫も隠されている。

まるで公園!広い庭とテラスで 内と外がつながる、開放的な住まい
外から見るとまるで公営の公園のように見える、南津軽郡のK邸。「敷地全体を使った地域に開かれた開放的な住まいにしたい」というKさんの要望を叶えたこの住まいは、随所に外部空間と内部空間をつなぐ工夫がされている。家のどこにいても外が感じられるこの開放的な住まいを形にしたのは、Kさんの中・高校時代の同級生であるmizuiro architects 一級建築士事務所、葛西瑞樹さん。その家づくりの詳細について、お話を伺った。







