猫たちも大満足の工夫がいっぱい。
お気に入りの家具も似合う家をローコストで

「ユウ建築設計室」の吉田祐介さんが手がけたこの家は、2匹の猫と暮らすOさま一家の住
まい。邸内には、猫と人間が楽しく暮らせる工夫が盛りだくさん。猫の習性に配慮しつつ
内装デザインにもこだわり、風合いのある家具が映える素敵な空間が完成した。

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「猫」と「家具」がキーワード
大人の3人家族の住まい

「ユウ建築設計室」の吉田祐介さんは、要望に親身に寄り添い住み心地のよい家をつくってくれると、多くの施主に支持されている建築家。どことなくかわいさを感じさせるナチュラルモダンな作風が特徴で、そのせいか女性の施主からの人気が特に高い人である。

吉田さんの設計で千葉県の大網白里市に住まいを建てたOさまも、お母さまと30代の姉妹という女性3人のご家族だ。インテリアが大好きなご一家で、手もちの家具はヴィンテージの洒落たものばかり。独自のデザインセンスを強みとする吉田さんは、そんなOさまの家づくりの願ってもないパートナーといえた。

住まいに対するOさまの要望は、大きく分けて3つあった。1つ目は、一緒に暮らす2匹の猫がのびのび楽しく過ごせること。2つ目は、手もちの家具が映える空間をつくること。3つ目は、コストをできるだけ抑えてこれらの要望をかなえることだ。

こうした要望に吉田さんのセンスが加味された『大網の家』は、猫が楽しく暮らせる「猫ポイント」とでもいうべきものが非常にハイスコアな住宅に仕上がった。しかも、人間が猫のかわいい仕草を見られる仕掛けも盛りだくさん。猫好きならぜひ参考にしたい工夫が至るところにちりばめられている。
  • 西の道路から見た『大網の家』。Oさまがおもちのヴィンテージ家具を見て、「外装も経年変化を楽しめるものに」と考えた吉田さんは、2階の外壁に焼杉を使用。対して、1階は白いサイディングを用いることでコストバランスを取りながら、2トーンの洒落たデザインに仕上げている

    西の道路から見た『大網の家』。Oさまがおもちのヴィンテージ家具を見て、「外装も経年変化を楽しめるものに」と考えた吉田さんは、2階の外壁に焼杉を使用。対して、1階は白いサイディングを用いることでコストバランスを取りながら、2トーンの洒落たデザインに仕上げている

  • 敷地は北西角地。道路に面した北(写真左)と西(写真右)は窓を少なめにし、プライバシーを確保

    敷地は北西角地。道路に面した北(写真左)と西(写真右)は窓を少なめにし、プライバシーを確保

猫が気に入る遊び心のある設計。
猫のかわいさを満喫できる工夫も満載

では早速、数々の「猫ポイント」をご紹介していこう。

『大網の家』は、1階が吹抜けのあるLDKと、洋室、水まわり。2階が2室の洋室というシンプルな間取りだ。

このうち、1階のLDKと洋室は南東に向かってL字で並び、Lで囲まれた部分にはテラスがある。これは「猫を外で遊ばせたい」との要望に応えたもので、猫はぽかぽか陽気の日にのんびりとお昼寝できる。

上下移動が好きな猫にとって格好の遊具になる階段は、家族が長時間を過ごすLDK内に配置した。猫たちは階段で遊べるし、LDKにある大黒柱は麻縄で巻いてあるから爪とぎも自由自在。人間にしてみれば、気ままに動き回る猫を日常的に眺められる。

階段をのぼって2階に上がると、LDKの吹抜けに面した階段ホール。ここで猫が上からLDKを見下ろす様子も愛らしい。さらに、階段ホールの一角には小さな猫スペースも。この猫スペースには小窓があり、小窓をくぐると1階の洋室の上部に設けたキャットウォークへ出られる。

吉田さんが「猫が小窓から顔を出したらかわいいだろうなと思って」と狙った通り、猫たちは引越し初日からこの小窓に興味津々。小さな丸い窓から1階の洋室をのぞき込む、かわいさ満点の姿を見せてくれたという。

猫たちと安心・快適に暮らすための配慮も厚い。猫のトイレは洗面室の近くにあって洗い物などに便利。先述のテラスは猫が敷地の外へ出ることがないように、高さのあるウッドフェンスで囲んでいる。

また、玄関ホールとLDKを仕切るドアの横にはガラスのスリット窓を設置。ドアは玄関を開けたときに猫が外へ飛び出すのを防ぎ、スリット窓は「気配を感じた猫が窓からのぞいてお出迎え」という楽しみを創出。そんな姿を見たら1日の疲れも一気に吹き飛ぶに違いない。

猫の習性だけでなく、「猫がこんなことをしたらかわいいな」という人間の気持ちもくみ取った設計はどれも心憎いセンスが光り、吉田さんはさぞかし猫好きなのだろうと思ってしまう。

だが、これだけ猫にフォーカスした住まいを見事につくり上げているにもかかわらず、驚くことに、吉田さんは猫と暮らした経験がないという。

「猫の習性については、本などでかなり勉強しました」とニコニコしながら話す吉田さん。

住まう人が望む暮らしをかなえるために常に全力投球の吉田さんは、2匹の猫が「望む暮らし」にも徹底的にコミットしたのだ。
  • 南から見た『大網の家』。吉田さんは南に立つ2軒の隣家の間に庭があることに着目し、そこからうまく光を採れるよう窓を計画している。ウッドフェンスで囲まれたところは、猫たちが自由に遊べるテラス。高さのあるウッドフェンスで猫が敷地外に出てしまうのを防いでいる

    南から見た『大網の家』。吉田さんは南に立つ2軒の隣家の間に庭があることに着目し、そこからうまく光を採れるよう窓を計画している。ウッドフェンスで囲まれたところは、猫たちが自由に遊べるテラス。高さのあるウッドフェンスで猫が敷地外に出てしまうのを防いでいる

  • 玄関土間はモルタル仕上げ。正面はLDKへのドア。帰宅時は、横のスリット窓から猫がお出迎えしてくれる

    玄関土間はモルタル仕上げ。正面はLDKへのドア。帰宅時は、横のスリット窓から猫がお出迎えしてくれる

  • LDK。天井、梁、壁の一部に取り入れた赤い珪藻土クロスがモダンなアクセントになっている。高さを抑えたダイニングの天井は、赤い珪藻土クロスを張った梁とラワン合板を組み合わせて、洒落た表情に

    LDK。天井、梁、壁の一部に取り入れた赤い珪藻土クロスがモダンなアクセントになっている。高さを抑えたダイニングの天井は、赤い珪藻土クロスを張った梁とラワン合板を組み合わせて、洒落た表情に

  • 1階の洋室上部のキャットウォークにある丸い小窓は、2階の階段ホールの猫スペースとつながっている。2階にいる猫が1階の部屋をのぞきこむ姿は悶絶級のかわいさ。猫自身の楽しさだけでなく、「猫がこんなことをしたらかわいいな」という人間の願望もかなえた設計はさすが

    1階の洋室上部のキャットウォークにある丸い小窓は、2階の階段ホールの猫スペースとつながっている。2階にいる猫が1階の部屋をのぞきこむ姿は悶絶級のかわいさ。猫自身の楽しさだけでなく、「猫がこんなことをしたらかわいいな」という人間の願望もかなえた設計はさすが

素材選び、組み合わせ、施工方法に技あり。
経年変化が魅力になる家を低コストで

家具が映える内装についてもご紹介したい。

Oさまの手もちの家具は北欧ヴィンテージのものが多く、「新建材は似合わない」と考えた吉田さん。1階の床は無垢のフローリング、壁は珪藻土クロスと、ワンランク上の素材を選んで上質感のある空間をつくり上げた。

一方で「低コスト」という要望にも応え、内装ではラワン合板やフレキシブルボードなど、比較的安価で経年変化も楽しめる素材を使用。外装も家具の雰囲気に合わせ、年月とともに味わいを増す焼杉を使っているが、サイディングと併用することでデザイン性とコスト圧縮を両立させている。

窓計画でも家具との相性を考慮した。採光や風通しを良好にしながらも、あえて「明るすぎない」窓配置にしたのだ。おかげで邸内にはやさしい陰影が生まれ、ヴィンテージの家具がしっくり馴染み、ホッと落ち着く居心地のよさを感じられる。

そして吉田さんのセンスの本領発揮ともいえるのが、LDKに取り入れた赤い珪藻土クロスだ。あめ色の家具とリンクするシックな赤は品のいいアクセントになり、空間の「おしゃれ感」が格段にアップ。階段の側面に張ったフレキシブルボードはカットしてタイル風に仕上げるなど、素材を使いこなす柔軟なアイデアも吉田さんならではだ。

吉田さんに家づくりを相談すると、希望すれば自身が設計した千葉県内の自宅を見学させてくれる。その自宅へ行くとよくわかるのだが、吉田さんは外装・内装素材の知見が豊富で、使い方、組み合わせ方のセンスも抜群にいい。高額な素材でなくても、なぜか、吉田さんの手にかかると「素敵」と言わせてしまうのだ。

そのセンスは『大網の家』でも大いに生かされ、入居後、Oさまからはメールでこんな感想をいただいたという。

「とても素敵な家をつくってくださり、ありがとうございました。至るところに吉田さんのセンスがあふれており、吉田さんに依頼して本当によかったと思います。何より、ご自身の仕事に誇りをもち、楽しそうに設計と向き合う姿は心から尊敬できました」

もし、吉田さんに自分の家づくりを託したらこのメールを思い返してみて欲しい。完成した住まいを目の前に、「ですよね!!」と何度も頷くことになるだろう。
  • LDK。ダイニング(写真左)は天井高を抑え、テラス側のリビング(写真右)は天井が高い吹抜けに。空間のメリハリが生まれ、1室空間の中で異なる居心地を楽しめる

    LDK。ダイニング(写真左)は天井高を抑え、テラス側のリビング(写真右)は天井が高い吹抜けに。空間のメリハリが生まれ、1室空間の中で異なる居心地を楽しめる

  • LDK。Oさまの要望も踏まえ、窓は空間が明るくなりすぎないように計画。やさしく入る陽光が陰影を生み、ヴィンテージの家具がしっくり馴染む

    LDK。Oさまの要望も踏まえ、窓は空間が明るくなりすぎないように計画。やさしく入る陽光が陰影を生み、ヴィンテージの家具がしっくり馴染む

  • LDK。床は無垢フローリング、壁は珪藻土クロスと風合いのよい素材を使い、シックな家具が映える空間に仕上げている。階段側面はセメントと繊維を主原料とするフレキシブルボードを大判にカットし、タイルのように張っている。こうした独創的な素材使いは吉田さんの得意分野

    LDK。床は無垢フローリング、壁は珪藻土クロスと風合いのよい素材を使い、シックな家具が映える空間に仕上げている。階段側面はセメントと繊維を主原料とするフレキシブルボードを大判にカットし、タイルのように張っている。こうした独創的な素材使いは吉田さんの得意分野

  • 2階の階段ホール。奥はLDKの吹抜けに面しており、1階にいると上から猫が見下ろすかわいい姿を見られる

    2階の階段ホール。奥はLDKの吹抜けに面しており、1階にいると上から猫が見下ろすかわいい姿を見られる

間取り図

  • 1F間取り図

  • 2F間取り図

基本データ

作品名
大網の家
施主
O邸
所在地
千葉県
家族構成
母+子ども2人+猫2匹
敷地面積
206.24㎡㎡
延床面積
89.4㎡㎡
予 算
2000万円台