
クラシカルな親世帯×リゾート風の子世帯
2つの魅力が光る、代々木の二世帯住宅
1階、2階でテイストが異なる、
大人3人が暮らす二世帯住宅
完成した『代々木の二世帯住宅』は、1階が親世帯、2階が子世帯という木造2階建て。要望にじっくりと耳を傾け、真摯に向き合う角倉さんは、今回も親世帯・子世帯それぞれの思いにとことん寄り添ってプランを練った。その結果、1つの建物でありながら、1階と2階は全く雰囲気の異なる空間に仕上がっている。角倉さんの施主ファーストな設計姿勢を感じられる住まいの魅力を、早速ご紹介していこう。
洋館の面影を残す【親世帯】
思いを尊重したデザインの工夫とは?
だが、お母さまの一番のこだわりは内装──具体的には、クラシカルな洋館だった旧I邸の面影を残すことだったという。「以前のお住まいには先代のときから大切にされてきたアイテムが多々あり、お母さまは、それらを受け継ぎたいという強いお気持ちをおもちでした」と角倉さん。
この、「建て替えで以前の家のものを取り入れる」というテーマ、簡単なようで実はテクニックが要る。新築は経年の味わいをもたないので、古いものを合わせるとチグハグで残念な感じになりかねず、意外と難しいのだ。
ところが角倉さんは、そのハードルを軽々と乗り越えた。LDKには旧I邸にあったアンティークの照明やスイングドア、ステンドグラスなど、意匠性の高い古いアイテムを入れているが、いずれも見事に空間に馴染んでいる。
新旧をこれほどまでに調和させることができた勝因は、大きく分けて2つある。1つは、ドイツ製の漆喰壁など本物志向の素材を用いて、趣のあるアイテムに負けない上質空間に仕立てたこと。中でも一番の立役者は、チークの木片を張り合わせた寄木状のフローリングだろう。ヨーロッパのパーケット・フローリングをイメージしたこの床は高級感と温かみを併せもち、クラシカルなアイテムととても相性がいい。
2つ目はたいていの部屋に存在する、ある部分への工夫だ。それは、意外かもしれないが「巾木」と「窓枠」。昨今は白色にする・細くするなど目立たないことが最上とされる巾木だが、角倉さんは木の色を生かし、昔ながらの広めの幅でデザイン。窓枠の木もあえて太めにした。すると不思議なことに、空間全体がどことなく懐かしい雰囲気になり、古いアイテムがしっくり馴染む。小さな操作で、こんなにも効果が出るのかと驚く仕上がりだ。
空間にノスタルジックな表情を添える角倉さんの工夫は、意匠性の高いアイテムのためばかりではない。例えば、お母さまの要望で以前の家から持ち込んだ、キッチンのカップボード。このカップボード、デザインも質感もそれなりの経年を感じさせるため、周囲のご家族はみんな、お母さまに新しいものを薦めたという。けれど、お母さまはなかなか首を縦に振らなかった。そこで角倉さんがよくよく話を伺うと、「この年齢になって、使い慣れないものを使いたくない」というお気持ちを聞かせてくださったという。角倉さんが古いものを受け入れる空間づくりにこだわったのは、そうしたお母さまの思いに応えるためでもあったのだ。
住まいの最適解は十人十色。建て替えるからといって、新しくすること、イマドキのデザインを取り入れることが正解とは限らない。そのことを本当によくわかっているから、住まい手の思いを丁寧にくみ取り、具現化しようと手を尽くす。角倉さんのそんな設計姿勢が伝わってくるエピソードだ。
木造2階建てだからできた理想の空間
現しの高天井とテラスが開放的な【子世帯】
理由は、防火規制だ。都市部の住宅は「敷地の広さや予算に制約があっても、床面積をたくさん取りたいから木造3階建てにする」というケースが多い。だが、東京23区のほとんどのエリアでは、木造3階建てにすると建築の防火規制(火災被害を最小限にするための規制)がかかり、現し天井のように木をむき出しにした内装が極めて難しくなるのだ。
「今回はヒアリングで『部屋数は少なくていい』ということがわかったので、だったら防火規制がかからない2階建てに収め、天井を現しにして奥さまのご要望に応えようと考えました」と角倉さん。それだけにとどまらず、LDKの一角にロフトを設けて吹抜けをつくり、天井の高さも創出。防火規制の対象にならない2階建てをキープしつつ、LDKに1.5階分のボリュームを生み出し、のびやかで心地よい開放空間に仕上げている。
そして、2階を語る上で外せないのが、LDKとひと続きの広々したテラスだ。このテラス、道路から内部が見えないように白壁や木製ルーバーで守られているが、テラスにいる人は青空と陽光をダイレクトに感じられ、とても気持ちがいい。さらに、大きなガラスで仕切られたテラスはLDKの一部のようで、邸内にいながらアウトドアの開放感を楽しめることも大きな魅力。夏季には強い日差しを遮ることができるよう、開閉しやすい電動オーニングを備えるなど快適性への配慮も細やか。現在、テラスはみずみずしい観葉植物に彩られ、光と緑に包まれるリゾート風の空間ができあがっているという。
ちなみに、「テラス付き」というのはIさま夫妻の一番の要望だったが、角倉さんはその要望に応えると同時に、以前の家にあった庭の「面影」としての役割ももたせている。
「設計しているとき、子世帯のテラスと旧I邸の大きな庭が私の中でつながったんです。駐車場の都合で本物の庭は小さくなりましたが、このテラスで、以前と同じように屋外の楽しい時間を過ごしていただけたら、と」
個別の要望にまっすぐ解を出す中で、ベースにある住まい手の思いを柔軟に反映させることも忘れない角倉さん。その温かな思いが息づく『代々木の二世帯住宅』はかつての面影を引き継ぎつつ、家族の幸せな日常を新たに紡いでいくのだろう。
間取り図
基本データ
| 作品名 | 代々木の二世帯住宅 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都渋谷区 |
| 敷地面積 | 148.77㎡ |
| 延床面積 | 162.27㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+母 |
| 予算 | 6000万円台 |
| 施主 | I邸 |
撮影:吉田 誠
設計者情報
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