
うなぎの寝床の敷地がこんなにも明るく
家族もペットもそれぞれが心地よい2世帯
昼でも電気をつけていた「うなぎの寝床」
この土地に親子2世帯で住み続けたい
そんな街の一角に施主のNさんの奥様の実家はあった。江戸時代には寺町・武家屋敷が広がっていたこのあたりは、いわゆる「うなぎの寝床」の家が点在する。「うなぎの寝床」は、京都や大阪に多くみられる、間口が狭く奥行きが長い敷地の土地のこと。かつて間口の広さで税金を課したことに対応して生まれたという。
この家は三方を建物に囲まれ、隣家とは人が通る隙間すらないほど密接していた。そのためほぼ陽が入らず、日中でも電気をつけて過ごすような生活だったという。また、建物自体も経年劣化し、雨漏りすることもある状態だった。
そのため、ご両親のAさん夫妻はマンションへの引っ越しを検討してみたものの、なかなか良い物件に巡り合わなかった。また、地元の人々との付き合いや祭りなど、この地で暮らし続けたいという想いも強かった。そんなことから、この地で娘夫婦との2世帯住宅への建て替えを願ったという。
しかしNさんとご家族は、果たしてこの土地で家族2世帯が快適に暮らせる家が建つのか?資金的には大丈夫か?という点が気がかりだったという。
そんな悩みに「相談に乗ってあげてほしい」と知人から依頼を受けたのが、「施主の想いを形にする」建築家、ef設計の木下さん。木下さんはこれまでのキャリアを通じて変形地やこだわりのテイスト、厳しい予算など、いくつもの困難な条件下の家づくりを成功に導いてきた。そのため「木下さんならなんとかしてくれる」と工務店や業界関係者からの信頼も厚く、相談や依頼が多く寄せられるという。
完全共有型の二世帯住宅でありながらも
それぞれの世帯の暮らしも気兼ねなく
2世帯住宅には大きく3つのパターンがある。1つ目は完全分離型。全体として同じ建物でありながらも、玄関もキッチンも風呂場も2つずつ設け、それぞれが独立した生活を送ることを重視するタイプ。2つ目は部分共有型。共同の玄関を入ってからは、完全に別の家のようなつくりにしたり、お風呂も共同で使うがキッチンは両世帯に設けるといったもの。そして最後が完全共有型。玄関やキッチンお風呂なども2世帯で使う、いわばサザエさんの家のような二世帯住宅だ。
「設計にあたり、どのようなライフスタイルかをじっくりお聞きしました。Nさん夫婦は日中は仕事のため、家に居ることが少ないということや、主にお母様がお料理をされるとのお話でした」と木下さん。
どのパターンがベストかは、それぞれの家庭において違ってくるが、完全分離型、部分分離型の2世帯住宅は、それぞれのプライバシーや独立性が高い反面、スペースや予算も費やす。また、将来どちらかの世帯の状況が変わったときに、設備を持て余してしまうこともある。完全共有型であれば、部屋が増えるだけで無駄が少ないというメリットもあるのだ。
こういった要素からN邸は、1階が親夫婦、2階をNさん夫婦とした完全共有型の二世帯とした。設備は共有とする一方、それぞれの世帯が気兼ねなく暮らせるようにするため、木下さんはNさんの要望にもあった、2階にNさん夫婦専用のリビングルームを設けることを提案。自分が好きなものに囲まれた空間で寛げるように配慮した。
限られたスペースや予算の中で、それぞれの世帯が気兼ねなく便利に暮らす空間とするとともに、将来にも配慮した最適解が提案された。木下さんの実力が存分に発揮された。
光の取り込みのカギは階段の位置
2階デッキテラスからの光を1階に
玄関には、腰掛けながら靴を履けるようベンチを設置。脇には大容量の収納スペースも設けるなど、利便性も高い。
扉を開けた先に1階のLDKが広がる。3方を囲まれたうなぎの寝床の中心であるはずなのに驚くほど明るい。それは階段および上階のテラスからの光が降り注ぐから。インテリアはデザインに造形の深い奥様がセレクトしたエメラルドグリーンの壁、パープルのテレビ台、ピンクやイエローの椅子のカラーもアクセントとなって気持ちまで明るくしてくれる。この明るい空間が帰宅した家族を出迎えてくれる。2世帯で共に食事をしながら楽しい会話が繰り広げられていることだろう。
1階のLDKの床はフローリングのように見えるが、実はクッションフロア。飼っているワンちゃんが歩きやすいようにという配慮も抜かりない。
1階の奥にはお風呂場があり、さらに奥には親夫婦の寝室。寝室の先には、専用のデッキテラスも設け、室内に光をもたらすとともに、洗濯物を干す場にもなっている。
階段を上り2階へ進む途中に見えてくるのが2Fテラスだ。暗くなりがちな1階に光を採り込む際、多く用いられるのが「吹き抜け」をつくること。しかし吹き抜けは光は取り込めるものの「使えない空間」を生んでしまうことにもなる。狭小の住宅では、もったいないスペースともいえる。この問題に対し、木下さんは上部に2Fテラスを作りそこに隣接するよう階段を設けた。こうすることで、階段が吹き抜けの役割を果たし、光ばかりか風の通り道にもなる。下部は洗面・風呂場にでき、デッドスペースを生まない。もちろん、洗濯物を干す場としても活用できる。2Fテラスと階段の組み合わせで一石何鳥もの効果を持たせた木下さんの力量には驚かされる。
2階右側には、Nさん夫婦のリビングルーム。こちらは1階とは違ったシックな印象。夜間を過ごすことが多いため、奥様もあえてトーンを落としたテイストにしたのだろう。数多くの蔵書や絵画、趣味のものが多く置かれ、Nさんも好きなものに囲まれた中で落ち着いた時間を過ごせているに違いない。
逆サイドに回ると、Nさん夫婦専用の洗面台や洗濯機置き場・寝室が配置されている。洗濯機置き場の上部には、階段状に棚のようなものが伸びている。実はこれはキャットウォーク。愛猫が寝室に繋がるキャットウォークを通り、上部の高窓から外の景色を見られるようにNさんと相談し作ったという。また寝室の扉にも猫ちゃん用の出入り口も設けた。
この家は、親夫婦・Nさん夫婦それぞれの世帯が、気兼ねなく居心地よく暮らす家に仕上がったばかりでなく、ペットのワンちゃん猫ちゃんにとっても快適な家に仕上がった。
この家の出来栄えに、Nさんは「資金面での不安があったものの、満足のいく家を建てることができて感謝している」、お母様は「光の入る家にしていただきありがたい」と感謝のコメントを寄せてくれた。
「壁の色やインテリアなどは奥様とのコラボする形の仕事でした。自分にはない発想をお持ちで、一緒にやった達成感があります」と木下さん。
きっと奥様も自分で手掛けた家に大きな愛着をもっているに違いない。
木下さんは、施主に寄り添いその想いを形にしてくれる建築家だ。実は木下さん住宅の相談だけでなく、土地が決まっていて、他と契約をされていない場合、無料でご提案を行っているという。手間暇もかかることを無料でなんて気前が良すぎる気もするが「ほとんどのお客様がプランを気に入っていただき、ご発注いただくことが多いのです」と自信をのぞかせる。
既に土地をお持ちの方、建て替えを検討されている方、木下さんがあなたの土地にどんな家を設計するか、見てみたくありませんか?
基本データ
| 作品名 | 天王寺の家 |
|---|---|
| 所在地 | 大阪府大阪市 |
| 敷地面積 | 56.24㎡ |
| 延床面積 | 100.1㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+両親、犬、猫 |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | AN邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

「展示場」として実際に見学できる 森の景観を活かしたホテルライクな邸宅
豊田市の住宅街にポツンと残された緑のなかに、『森にたたずむ邸宅』はありました。天然石による重厚な佇まいが目を惹くこの家を設計したのは長坂篤建築研究所(略称nalabo)。海外リゾートを思わせる、ホテルライクな邸宅の全貌を見ていきましょう。

日々の暮らしをもっと楽しく!室内外を行き来できる回遊する家
同じ建築学科の友人だったOさんのために田中朋久さんが手がけたのが、高崎市の郊外に佇む2階建ての「ぐんまの家」。貴重な屋敷林に隣り合う土地に完成したのは、外の自然を上手く切り取りつつ、周囲の環境に溶け込む住まいでした。家の中と外を連続して回れるように動線を引いた造りは、まさに「回遊する家」。家族が楽しく過ごせるための工夫が随所に凝らされた、田中さんの家づくりに迫ります。

お施主様ご夫妻の暮らしに寄り添う、「ふたり」と「それぞれ」の寛ぎがある家
真鶴町に長くお住いで、気風や風土を知り尽くしているI様ご夫妻から、2人で暮らす家をつくりたいとご相談を受けた一級建築士の徳家明美さん、統さん。真鶴半島の美しい景色を活かしながら、ご夫妻の今とこれからのライフスタイルに合わせた家づくりには、どのような物語があったのかを追う。

内外空間を緩やかに繋ぎ、視線カットも実現 高低差を活かした宙に浮くテラスの多機能性
愛知県清須市に誕生した、独創的な邸宅。高低差が80cmある敷地に、視界の良さを確保しつつ、プライバシーも守りたいという要望に応えた作品だ。高低差を活用した宙に浮くテラスは奥行きがあり、内外を穏やかにつなぐ。室内には段差を設け、前面道路から室内は見えない。この作品に込められた工夫の数々をご紹介しよう。

まるで避暑地の別荘のよう! 地域からも愛される、雑木の庭が気持ちいい住まい
平和公園にほど近い、閑静で緑豊かな住宅街に佇むKさん邸。「大きな窓から緑を感じたい」という施主の希望通り、敷地の南側に広がる庭には落葉樹と常緑樹がバランスよく植樹され、周辺の環境とも美しく調和しています。設計を手掛けたのは森建築設計室の森さん。「別荘地のような雑木の庭のある、住まう方からも、周りからも長く愛される家」をテーマに、果たしてどんな家が誕生したのでしょう。

目指したのは「今までにない住まい」 吹き抜けのリビングから公園の借景を臨む家
これまで住んでいた賃貸住宅が手狭になったため、新しい家づくりを決意したKさんご夫妻。輸入業に携わり、髙い美的センスをお持ちのKさんが目指したのは「今までにない住まい」でした。今回その要望に応えたのが、ビ・ハウスの営業担当である小林圭介さんと、設計担当の魚住宏一さんです。それぞれがアイディアを出し合って完成したK邸は、まさにオリジナリティあふれる、唯一無二の住まい。その細部にわたるこだわりと、家づくりの過程をご紹介します。

上質なモダン建築がもたらす極上の時間。 都心に佇む羨望の高級邸宅
住まいは一生の中で多くの時間を過ごす場所。その場所が、いるだけで至福を味わえる空間だったらどんなにいいだろう。そんな施主の思いをかなえたJWA建築・都市設計一級建築士事務所 渡辺純さんの、上質なモダン建築の魅力を紹介する。

シンプルだけど単純じゃない 女性のためのこだわりの家
母と娘が2人で住む、白い三角屋根の家。この家を設計したのは、シンプルで飽きのこない家をつくることに定評のある、石川淳さん。明るさと美しさを兼ね備えた大人の女性の住まいの秘密に迫る。

世帯をつなぐ2階テラス。個の独立と家族間の共有を両立した、独立型二世帯住宅
お兄さま一家が戻ることをきっかけに、兄世帯、母・弟世帯の完全独立二世帯住宅に建て替えたいとお考えだったお施主さま。しかし建築家の牧野さんはヒアリングでの家族皆さんの仲のよさから交流できる場所を設けたいと考え、2階テラスを提案。あえて外部に設けたからこそ、独立と共有が両立する家になったという。









