
こんなところからも光が?
8つの光庭をもつ白い家
「ha」 hosaka hironobu architect associate
先輩の家に魅了され
注文住宅を建てることを決意
もともと世田谷のマンション住まいだったというKさんが、この地に引っ越してきたのには理由がある。それは「どうしても自邸を建てたくなった」から。では、なぜ自邸を建てたくなったのだろう。そこには、Kさんのこれまでの価値観が一変するような出会いがあった。
あるとき、会社の先輩であるSさんの家に招かれ訪れたKさん。S邸のシンプルな外観と、スタイリッシュな内部空間に一瞬で魅了された。そしてSさんから、家づくりのストーリーと建築家とのやり取りの話などを聞き、「自分も希望どおりの家を建てたい」という想いを抱いたのだ。このS邸が、シンプルさの中に豊かな空間を生み出すことに定評のある「ha」の保坂さんが手掛けた「three colors」だ。
もともと、注文住宅や建築家に家づくりをという考えは持っていなかったKさん。そんなKさんが感化されるほど、保坂さんのつくる家は、人々を虜にする。
ちょうどそのころ、お子さんが増えることもあり、自邸づくりを決意したKさん。土地探しを始めて出会ったのが、これまでのマンションと同じ沿線上にある横浜のこの土地だった。
「Sさんからご紹介いただき、箱型の家を建てたいと伺っていたので、土地のアドバイスなどをさせていただいていました。この土地でなら、箱型が建てられますとお伝えしたところ、すぐにご購入されたようです」と保坂さん。
こうして、すぐに保坂さんとの家づくりがスタートした、というわけではない。実はKさん、家づくりに関する情報収集を行い、人気の建築家を含む複数の建築事務所にプランや見積もりを依頼していたのだという。
しかし、結果的に保坂さんに依頼をする。保坂さんがクライアントに寄り添い、全て1人で仕事を行うというスタイルであったということ。大手建築事務所などの場合、担当が分かれていたり、代表とやりとりはしていても、実際の作業はスタッフが担当するということも多い。家という大きな買い物をする上では、担当の顔がわかり、自分に寄り添ってくれる人であると心強い。だからこそKさんは自分と真摯に向き合ってくれる保坂さんを選んだのだ。
「他社さんと比較検討された上で、私にご依頼いただいたことが、とても嬉しかったです」と保坂さんは語る。
いかに施主の要望を満たすか
8つの光庭で外に閉じて中に開く
「Kさんは、家づくりにあたって、相当勉強されたりリサーチされたのだと思います。叶えたいことの明確なビジョンをお持ちでした」と保坂さん。
Sさんの家づくりでは、具体的な要望は、広いリビングと駐車スペース以外にはなく、「どんな提案をしてくれるのか期待されている」という感じだった。
一方、Kさんの家づくりは、「いくつもある叶えたいことやこだわりを、保坂さんがどう具現化してくれるか」という感じだったという。
「Kさんの要望を、私がどう咀嚼し、どんな手法で実現するのか、それを求められている感じがしました。Sさんとは違ったアプローチでしたが、それも楽しかったことを覚えています」と保坂さん。
Kさんから大きな要望として挙げられたのが「シンプルでミニマルなデザイン」「外に閉じて中に開く、中庭とガラス張りのリビング」。この要望の解決策として浮かんできたのが「コートハウス」という手法。家の中心や端に大きな中庭をとり、光や開放感を得るのは、スタンダードな解決方法ではある。しかし保坂さんはもう1段上の発想をした。
「Kさんが求めているのは、大きな中庭ではないのではないか?と直感しました。求めているのは、光が差し込み、抜け感がある豊かな空間。そうであるならば、何も大きな中庭である必要はない。高さや大きさといったキャラクターの違うヒューマンスケールの「光庭」を家の中に点在させ、どの部屋にいても快適な空間にすることこそが、Kさんの望みを叶えることになるのではないかと考えたのです」と保坂さん。
この提案に「とても喜んでいただけました。『そうきたか!』『想像を超えてきた』というような表情だったことを覚えています」と保坂さん。
中庭というリクエストをそのまま受け取るのではなく、施主が真に叶えたいことを掴み、想像を超えるアイデアを提案する。保坂さんは、建築家に家づくりを依頼する醍醐味を味わわせてくれる。
「このアイデアを面白いと受け入れてくれたKさんにも感謝しています」と保坂さん。
この光庭は、結果的に家中の8か所に設けられることとなった。
こんなところからも光が?
シンプルで清涼な立体空間
そんなこだわりの詰まったK邸を見ていこう。
「白い箱」という形容がぴったりなK邸。木造でありながら、重厚感を出すために壁は地上ギリギリまで伸ばし、笠木も極力薄くした。壁はW壁として、外側の壁に大きく設けられた窓のサッシも枠が出ないように特注したという。
駐車スペースの上には、2つの光庭から光が差し込む。駐車スペースの右側、前面の壁と内側の壁の間が玄関へのアプローチ。あえて長くとったというアプローチは、プライバシーの保護とわくわく感の演出だ。そしてこのエントランスの上部も光庭となっている。
玄関を入りホールへ進むと、先まで続くカウンター収納が延びる。外壁と同じ塗装で一体感抜群だ。足元のグレーのタイルは、保坂さんがショールームに同行して一緒に決めたものだという。
視線の先には、柔らかな光が降り注ぐLDKが見えてくる。白さ際立つ空間だ。左手には大容量のSICもあり、生活感が出るものは全て収納できるようになっている。
歩を進めた先に広がるのは、LDKの大空間。思わず「おおー」と声が出てしまう。閉じた外観からは想像もつかないほど、明るく開放感抜群な空間だ。LDKの半分が2層分の吹き抜けとなっており、さらにその一部が煙突のように0.5層分の吹き抜けとなっている。こうすることで、一番高いところから入ってくる光が、白い壁に反射し、それが柔らかく1階のLDKを照らすのだ。
またこのLDKには2つのハイサイドの窓があり、そこからも光が入る。そして何より隣接する大きな中庭が視線の抜けと光をもたらしてくれている。この中庭は、夏は直射日光を遮り、冬の低い日差しは室内に導く絶妙な設計。
キッチンも、この家の形状と同様に白い箱といったイメージ。極力シャープで余計なでっぱりのでないよう特注。換気扇すら真っ白の箱だ。
そして背面には大容量のパントリーが隠れている。冷蔵庫もその中に収納することで、生活感を出さないのだ。
洗面・風呂は中庭に面したガラス張りの空間。造作の洗面台も真っ白な浮遊感のあるデザイン。こだわりシンプルな水栓をもつダブルボウルだ。光あふれる気持ちの良い空間で朝を迎えることができるだろう。バスルームは、洗面の奥にあるものの、ガラス扉で仕切られているので、一体感がある。バスタブは床に埋め込み、視線の先に中庭の上空が見えるよう配置した。
2階には夫婦の寝室と2つの子供室、ランドリールーム。北側の夫婦の寝室には、大きなピクチャーウインドウが。玄関アプローチ上部の光庭からの光と、視線の先の樹々が目を楽しませてくれる。
LDK上にある子供部屋は、それぞれLDKと繋がる室内窓とトップライトを設置。LDK上部の光庭からの光をおすそ分けしてもらえるという設計だ。
どうしても生活感が出てしまうランドリールームは、プライベートゾーンでもある2階に。
トップライトや光庭からの光で照らされ、室内干ししてもよく乾くのだという。
この家の出来栄えにKさんも「よく考えて作られたんだと感じている」「いらした方がびっくりされている」とお話だったという。
通常のいえは1階、2階というように平面を重ねて考えられることが多い。しかし保坂さんの生み出すいえは、実に立体的なのだ。「こことここが繋がっているんだ」「ここからも光が入るんだ」と驚かされることも多い。それは保坂さんが、画一的に部屋を並べたり、上下を分断する設計ではなく、空間をどう繋げ、光をどう取り入れるかという「豊かな空間づくり」に主眼を置いているからに他ならない。
保坂さんがつくった家に出会い、人生が変わったKさん。自分のこだわりが詰まり、さらに想像を上回る家となったことだろう。あなたも、保坂さんの家で人生を変えてみたくはありませんか?
間取り図
基本データ
| 作品名 | 8つの光庭のある家 |
|---|---|
| 所在地 | 神奈川県横浜市青葉区 |
| 敷地面積 | 152.88㎡ |
| 延床面積 | 114.44㎡ |
| 予算 | 4000万円台 |
| 施主 | K邸 |
撮影:アダボス 足立
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

天窓から光がそそぐ、三角屋根の豊かな空間。 家時間が楽しい「屋根裏リビングの家」
家を建てるときに避けて通れない建築規制。この規制を見事にメリットに変換したのが、『屋根裏リビングの家』だ。イノウエヨシムラシタジオ(IYs.inc)の井上亮さんと吉村明さんのセンスと工夫が光る、楽しさいっぱいの住まいの魅力を探ってみた。

無限の可能性を秘めたシンプルな構造。 多様なスケール感が居心地いいカフェ
いつか自分のお店がやりたいというクライアントの夢を叶えるために建てられたカフェ。建築家の五十嵐理人さんは、カフェとしての使い勝手の良さ、居心地の良さを追求すると同時に、建物のこれからも考えた。壁や窓を全て取り払っても建物は残り、新しい使い方ができるというこの建物がどのように生まれたかを探る。

「こと」をテーマに空間をデザイン それぞれの「世界観」をカタチに
「北方の家」の設計を手掛けたのは、「たてこと空間研究室」の代表を務める佐藤悠馬さん。建築・空間つくりを通して「こと」をテーマに、お施主さまの「世界観」を具現化した設計を得意とする佐藤さんとって、「建築」とは、「家づくり」とは何かをうかがってみました。

既製品を用いてコスパとデザインを両立 空間全体を見渡せる開放的な住まい
弟夫妻より家を新築したいと依頼を受けたいのはな建築事務所の2人。時期はちょうど工事費が高騰し始めた頃だった。コスト管理をしながら、望み通りの家をつくる。もちろんインテリアも妥協なく、と取り入れたのは既製品の建具など。意外かもしれないが、完成したのは洒脱なデザインの開放的な家だ。

地元の穏やかな景色とつながる開放空間。 「ここで暮らす幸せ」を実感できる家
家を建てるということは、その土地に住むということ。建築家の北村拓也さんはこの当たり前の事実を丁寧に受け止め、家と土地の関係が心豊かな暮らしに結び付くように考え抜く。そうしてできた住まいの魅力を、北村さんが設計した『畝の家』から探ってみよう。

静かな中庭と明石海峡 2つの景色を望む家
島根県にある足立美術館の庭園をイメージした庭と、ダイナミックな海峡という、趣が異なる2つの景色を贅沢に楽しむことができるO邸。こちらを設計したのが、ef設計の木下 太さんだ。景色を中心に据えつつも、4人家族の暮らしやすさをしっかりと踏まえた家づくり。その詳細をご紹介しよう。

住んでたことが一生の思い出に。豊かな空間性が自慢の集合住宅
敷地に入ってすぐ「何だろう、この楽しさ!」と感じるT様のマンション。「ここは特別」とT様が言うマンションは、元・花市場だった広い敷地を生かしきった遊び心あふれる住まいだ。

「持続可能な暮らし」を理想とした 「自然と共にある」建築家の自邸
建築家自身がプランニングした「自邸」には、建築家の思想が詰まっている。「持続可能な暮らし」をテーマに、太陽光発電&高断熱・高気密な住宅での「自然と共にある生活」を実現した「石橋邸」の家づくりを紐解いていこう。

制約があるからこそのやりがい。デザインされた動物病院。
住宅と共に、動物病院の設計も多く手掛けているのが水石浩太建築設計室の水石浩太さんです。 一般の住宅と異なり、動物病院という決まった用途空間の設計においては、さまざまな設計上の制約があります。「制約があるからこそ、アイデアが出せる」という水石さん。水石さんが一体どのような工夫をして居心地のいい空間を設計しているのか、お聞きしました。









