
デザイン力と質感ある素材が醸し出す高級感
大型キッチンをはじめ家具全てを造作した家
「ha」 hosaka hironobu architect associate
自社ビルのワンフロアをフルリノベ。
間取りもデザインも自由度高く要望を叶える
依頼を受けたのは、「ha」hosaka hironobu architect associateの保坂裕信さん。以前、お施主さまのご親戚の家を担当したのがきっかけだったとのこと。
フルリノベーションだがビルの中にあるため、南西に走る壁面のほぼ中央にあるエレベーターの位置は動かせないことから、玄関は以前と変わらずエレベーターを降りてすぐの同じ場所にある。玄関から進む通路を挟み、右側がプライベート空間だ。手前にご要望だった大型ウォークスルークローゼットと寝室を、その先にはトイレや浴室などの水回りを集めて配置した。
そして、床面積145㎡以上あるワンフロアのうち、左側の半分を丸々使って計画したのがLDKと客間だ。客間は普段は開放されLDKと一続きになっており、来客が宿泊するときのみ仕切るという使い方ができる。場合によっては足を踏み入れること自体が少なくなる可能性もある客間をフレキシブルに使える空間に、というのはお施主さまの希望から取り入れたとのこと。十分に広いLDKをさらに拡張できることは、ホームパーティーを開くことも多いというお施主さまにとって強く叶えたかったポイントだったに違いない。
「新築と違ってリノベーションは法律的にも自由にできる部分がかなりあるので、要望を叶えやすいんです」と保坂さん。スケルトン状態にすることから始まるフルリノベーションは、ライフスタイルに合わせた住まいをつくるよりよい方法のひとつといえるだろう。
自社ビルゆえに実現したさらに明るいLDK
空間に負けない、存在感あるキッチンを造作
LDKの中でも目を引くのが1m×3.4mという大きなカウンターを持つキッチンだ。家づくりにあたりお施主さまは、ご自分が造作家具を扱っている以上は、既製品を置かないと決められていた。そのため「リゾートスタイルを獲得した家」の浴室、洗面、収納など全ての家具は、外部の造作家具会社に特注した一点物なのだという。もちろんこのキッチンも保坂さんがデザインし、造作したものだ。
とにかく広いので、一般的なキッチンの大きさでは想像以上に小さく見えてしまうと保坂さん。まずLDK に置く予定のダイニングテーブルやソファの配置を決め、バランスを見ながら大きさを決めたという。もちろんただサイズを大きくするだけではなく、バーベキューコンロを備えるなど、機能も充実させた。
さらに、ご趣味で器をたくさんお持ちだという奥さまのためにLDKの壁面いっぱいにL字で壁面収納を計画。LDKの中は仕切るものなくシンプルで、開放的な空間を維持できた。奥さまはお気に入りの器を使って料理を楽しんだりお酒を飲んだりしながら、ダイニングやリビングにいる人たちとコミュニケーションが取れるところがお気に入りだそうだ。
インテリアについては、「バリのリゾートホテルのような、ラグジュアリーでホテルライクな設えの中にリゾート感をプラスしたい」とお望みだったという。さらに、素材そのものにも「あまり出回っていない、素材感が感じられるものを提案して欲しい」というリクエストがあった。
そこで保坂さんが取り入れたのが「シルバーギャラクシー」という天然の石を薄くスライスした建材だ。石の質感が存分に得られるそれをキッチンや収納などで多用し、本物からしか得られない贅沢な重厚感がある空間をつくり上げた。
他にも、床には高級感が変わるという60㎝角の大きなタイルを、また天井はウォルナット材のフローリングを採用。また、柱には外壁で使われることが一般的なタイルを貼った。保坂さんはその意図を「お施主さまがお持ちの造作家具に、ふさわしい空間にしたかったのです」と語る。
確かな素材に裏打ちされたモダンなデザイン。さらに、印象的に使われた自然素材によるリゾート感。現在はグリーンも所々に置かれ、さらに高級ホテルのような雰囲気が演出されているのだとか。まさに狙い通りのLDKに仕上がった。
要望にはプラスアルファを加えて提案。
素材感ある仕上げが唯一無二の空間をつくる
玄関の靴箱にもシルバーギャラクシーを使用。ミラーと組み合わさり、男性的なシンプルさが感じられる。また、仕切りの扉はお施主さまと相談し、シルバーに塗装した。個性的でありながら白く塗装した壁と調和していることに驚く。
重厚感あるLDKと雰囲気が一転する水回りも、また見ごたえがある。洗面台に木材が使用されている以外は、真っ白な空間なのだ。洗濯機も扉の付いた個室に収めるなど非日常を追求した演出に、浴室に設けられたレインシャワーなども相まって、本当にリゾートホテルにいるかのような気分が味わえる。
「やはり造作家具を普段から扱っていらっしゃる方でしたので、お好みのスタイルや要望をしっかりお持ちでした」と保坂さん。ただ反映するだけでなく、お施主さまのアイデアや希望を受け止め、さらに発展させた提案を心がけたそうだ。フルリノベーションということもあり、打ち合わせを通して一から空間をつくり上げる時間そのものも贅沢だったという。
デザインの力と素材の力が合わさり、一般の住まいでは珍しい圧倒的な高級感があるこの「リゾートスタイルを獲得した家」。これだけの造作家具を特注したメーカーとの意思疎通や調整も並大抵のことではなかったに違いない。この住まいが実現できたということが、保坂さんの建築家としての力量を知るよい例だといえるだろう。
撮影:有限会社アダボス 足立和久
基本データ
| 作品名 | リゾートスタイルを獲得した家 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都台東区 |
| 延床面積 | 145.68㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
| 予算 | 3000万円台 |
設計者情報
この建築家が建てた家
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