
行政も納得!
安全と癒しを、街と住み手に提供した奥の手とは!?
崩れそうな土留めを通行人と家主のための庭へ
そんな折、山梨と東京で活動している建築家の窪田さんに出会った。窪田さんの自宅兼事務所には苔やつわぶき、シダ類が群生する緑の壁があった。自然な壁面緑化に惹かれて話し始めると、話題は家の話へ。本当に土留めをつくり直さないといけないのか、古い土留めさえ撤去すればそのままでも問題はないのではないかと素朴な疑問をぶつけた。窪田さんは当時をふりかえってこう言う。「ハウスメーカーさんには難しいと言われたそうですが、お金をかけずに安全対策をするならば、土留めを撤去して法面(のりめん)に戻すという老沼さんの考えは僕も正解だと思いました。そこで、調査をさせていただいたところ、30度の傾斜を残し、芝を植えて処理する方法で充分だということが分かりました」さらに、中庭のある家を多く手がけてきた窪田さんは、こんな提案もした。「土留めに土を盛って平らな庭をつくっていたので、この方法では庭が斜めになって見えなくなってしまいます。そこで、小さいコンクリート塀を建てて内側の壁面を緑化して部屋から緑を楽しめるようにしました。塀の脇には園路もつくって歩けるようにしてあります」。塀から少しだけ頭を出す家との調和をとるように、道路側には石を張って仕上げた。
土留めの修繕費用を最小限に押さえて、ここに住み続けたいと考えていたOさんご夫婦にとって、家のリフォームまで予算内におさまる窪田さんの提案は理想的なものだった。長年、親しんだ家に手を入れて、緑の庭を眺めながら気持ちよく住み続けることができる。東京都もリフォーム後の状況を見て安全を確認し、「こんな方法もあるんですね」と評価した。近所からも傾斜地を覆う芝と、石張りの塀から垣間見える風格ある家は「立派になりましたね」と評判だ。今あるものを活かして、そこに住む人の生活までデザインするのが設計だと話す窪田さん。ここに生活するOさん一家の暮らしもしっかりと描ききった。
家族とともに年をとった家を大切に
景色のいい2階はコンクリートの壁を抜いて、30畳近くあるリビングをつくった。主に、応接間として使うことを想定しており、キッチンも扉のなかに隠せるようになっている。もともとが気持ちの良い部屋をさらに開放的にしたリビングは評判も上々だという。元々1階にあったLDKはそのまま残して、普段使いのリビングとして使い分けることにした。寝室を1階に移したので、いずれ階段が辛くなっても1階だけで生活できる。緑の好きなO邸にいつの間にか増えていた鉢物は整理してバルコニーにまとめた。家を隠す大きな塀がなくなったので、柵をつたうツル植物は外からもよく見える。
以前の家もよく知る、ご主人の妹さんはリフォーム後にO邸を訪れ、その変貌ぶりに感心した。ちょうどリフォームを考えていた妹さんはすぐに窪田さんを紹介してもらったそう。それほど大掛かりな工事はしていないと窪田さんはいうが、空間の質は大いに上がったのだということが窺いしれるエピソードだ。
基本データ
| 所在地 | 東京都多摩市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 1,000㎡ |
| 延床面積 | 330㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども1人 |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | O邸 |
設計者情報
この実例を見た人はこちらも読んでいます

画家夫婦のこだわりと創作を支えるのは、快適なOMソーラー!?
アトリエ付の自宅を建てることにしたYさんご夫婦。夏は涼しく、冬は暖かい家が欲しいと考えたときに、1人の建築家の顔が浮かびました。

家族が集まるLDKをリノベーションで実現。 移住されるお施主さまの一番の味方は建築家
東京から三島へ移住を決められたお施主さま。昔ながらの間取りの物件を、家族の暮らし方に合わせリノベーションしたいとお望みだった。依頼を受けた建築家の武本さんは、壁を取り払い、視線の抜けもつくって見事に実現。それだけではない。細やかな気遣いでお施主さまのこれからの暮らしを期待に満ちたものにした。

ご先祖、面影、家相、耐震!一族の家長ならではのリノベとは?
祖父母の家、両親の家、自分たちが住む家と代々の家が集まって建っている場所。傷(いた)んだ自分たちの家を建て直すことになったご夫婦が設計を頼んだのは、甥にあたる建築家の渡辺仁さんでした。

設計の力で、制約をデザインに昇華。快適・豊かな二世帯住宅にリノベーション
リノベーションは既存建物の梁や柱の影響で、空間デザインが微妙な仕上がりになることも少なくない。だが、二世帯住宅に改修したこの家では、リノベーションとは思えない洗練空間が誕生。設計を担当したドキアーキテクツ・熊田康友さんの秘策とは?

建物が看板の代わりに 歯科医院のイメージが変わる安らぎ空間
皆さんは歯科医院にどんなイメージを持っていますか?「緊張する」「痛そう」「ちょっと怖い」といったネガティブな感情をもつ方も多いことでしょう。そんな歯科医院のイメージを覆す「木の温もりに包まれた空間で、庭の景色を見ながら治療を受ける」歯科医院を作ったのは、関西を中心に様々なジャンルの建物を手掛けるYYAの吉野さんでした。

「調和」と「融合」で実現 日本の住宅の新たなカタチ
都内の閑静な住宅街に、ずっと以前からそこに存在するような、落ち着いた佇まいの建物がある。この建物はMOO空間設計室宮田さんと、そのご家族が住む自宅兼事務所。さらに賃貸住戸といった顔も持つこの家の秘密に迫る。

4年かけて土地探しするほど施主が惚れた デザイン性と使い勝手と両立させた家
女性目線を大切にしながら「暮らしやすさ」と「デザイン性」を兼ね備えた住宅を生み出している株式会社人と古民家 ヒトコミデザインの牧野嶋さん。施主のTさんご夫妻は、牧野嶋さんに自邸を設計してほしいと、約4年もの間土地を探し続けていたのだという。 Tさん夫妻の理想の住まいを実現した、牧野嶋さんの手腕に迫る。

近隣に家が増えても環境を変えずに暮らせる 壁に囲まれた中庭がある、明るい家
新規分譲地に自宅を建てるにあたり、考慮すべきなのはこれから家が増え環境が変わる可能性があること。お施主さまが要望されたプライバシー性や開放感を実現するため、建築家の池田さんが出した答えは「中庭を壁で囲うこと」だった。完成したのは壁の存在を忘れてしまうほど明るく、風通しのいい家だ。

緻密な計算と小さな声に耳を傾ける!ずっと愛せる素材の住まい
20年来住んでいたマンションの周囲の環境変化により、新築の戸建てを検討していたGさんご家族。訪れたオープンハウスで見た温かみのある家を気に入り、建築家の金子正明さんに家づくりを依頼する。たたずまいと木材の風合いを大切に生かした大屋根の家は、シンプルながら物語に出てくるような愛らしさを醸し出す。
