
資材置き場、オフィス、そして憩いの場
充実した生活を実現する“小屋”の魅力とは
用途が明確だから、自宅の部屋より快適便利
仕事や趣味を充実させる“小屋”の魅力とは
しかし、電気工事会社の単なる資材置き場をこの記事でご紹介する意図はない。この建物を大きな“小屋”とみなし、“小屋”の魅力や便利さをお伝えできればと考えている。
都会や都市の中心部では土地に余裕がなく、敷地内に小屋を建てることが難しいことも多い。しかし日本全体で見れば、地方を中心にある程度余裕があり、敷地内に小屋を建てるケースは珍しくない。レジャー用品や園芸用品の収納用、あるいは趣味を楽しむための小屋などを建てて楽しんでいる人もいる。
今回の記事ではこのように用途がはっきりしている小屋が、いかに自身のライフスタイルを充実させ、毎日の生活を豊かにすることができるのかをお伝えしたい。
この作品は電気工事会社を営むお施主様の、自宅敷地内に建てられた。その用途は複数で、主に以下の3点だ。
優先順に並べると、
1:資材置き場
2:会社のオフィス
3:仕事仲間がくつろげるリフレッシュ空間 兼 近隣住民のための災害時避難場所
となる。
会社の資材置き場ではあるが、隣に建つ住宅の“はなれ”としての機能を持つ自由な使われ方をする建物だ。
手掛けたのは東海地区を中心に幅広く全国で活動をしている、葛島隆之建築設計事務所の代表、葛島さん。注文住宅はもちろん、他にも店舗や医院、オフィスや倉庫など、その作品も多岐にわたる。新築だけでなく、既存の建物の増改築も数多く手掛けていることが特徴だ。
葛島さんは、小屋の魅力や可能性についてこう語った。
「ある程度敷地に余裕がある地方では、ライフスタイルを豊かにするための小屋が有効になる場合があります。たとえば普段生活をしている家屋に、ある目的や機能を持った部屋を増やしたいと思っても、性能が過剰に担保された部屋の面積が大きくなってしまい、コストが上がってしまいます」。
「そのような場合に、必要十分な広さと性能を持ち、目的にあった“はなれ”としての小屋を作ることで充実した生活を送ることができるのです。趣味の道具をメンテナンスしたり、整理して収納できるガレージのような小屋がイメージしやすいでしょう。日常生活は機能的で便利な家で過ごし、趣味などの時間はそのための小屋で満喫する。そのようなライフスタイルがあっても良いのではないでしょうか」。
葛島さんはこのような考えで、家庭ごとに違う趣味や嗜好を楽しむための小屋を建てる提案をしている。
資材置き場は最大、オフィスは最適な容積に
憩いの場なので明るさも確保した多目的小屋
電気工事会社の資材置き場として考えた場合、収納量と収納のしやすさが求められる。たとえばエアコンの室内機や室外機、複数種のケーブルや工具類は、形や大きさ、重量が異なる。
そこで葛島さんは、収納の自由度を高めることが使いやすさに直結すると考えた。
具体的には建物の構造材が収納棚の柱を兼ねるものとし、棚はその柱の間で自由な高さに設置できるようにした。構造材が収納の柱も兼ねているので、強度は問題ない。天井近くまで棚を設置でき、後から棚を購入する必要もないのでコスト面でも有利だ。
断熱性能と空調を必要とするオフィスは、建物の中に配置することを考えた。オフィスを無駄に大きくすると資材置き場が狭くなり、断熱材などのコストもかさむ。そこで必要な机やプリンター、冷蔵庫やキッチンの数や大きさを確認し、必要十分な広さと容積を割り出した。オフィス上部空間の有効利用も徹底。ロフトのような空間で資材置き場やテーブルを置いてくつろげる場所として活用できるようにした。
くつろぎの場所は、建物の中央部に配置できるようにした。人が集う場所なので通常の資材置き場には必要がない明かりとりを設け、外の光が十分に届くものとした。建築場所の周辺は竹林や緑に囲われているため、その景色を内部に取り込む意図もあった。出入り口には高さがある電動シャッターを設置。高さがある作業車をそのまま中に入れることができ、くつろぎタイムに開けたままにすると、半室外の空間が現れる。
建物全体は直方体ではなく、上から見ても横から見ても変形している。建築予定地が変形していたことに加え、敷地全体も不定形な形になっていたため、その方が馴染むと考えたからだ。
入口のシャッターや左奥側は特に上部が張り出しており、庇のような機能をあわせ持つ。洗ったシートを干す場所の目隠しにもなっている。元から建っている家屋側の屋根は低くした。反対側を高くすることで容積を確保しながら、家屋側の圧迫感を軽減する配慮がなされている。
この作品には細かな工夫やその他のアイデアがまだまだ隠されている。詳細はぜひ写真の説明文でご確認いただきたい。
お施主様・従業員・近隣住民がみな満足
「小屋の魅力と可能性をお伝えしたい」
以前はアパートを借り、資材置き場兼事務所として使用していた。しかし業務拡大で資材の量が増え、どんどん事務スペースを圧迫することに。もちろん従業員の憩いの場などにスペースを割く余裕はなかった。
しかしこの作品が完成すると、資材の収納は自由にでき、事務所スペースも十分な広さが確保され、従業員や近隣住民とくつろげるスペースまで誕生した。お施主様だけでなく、関係する人たちの全員がとてもこの空間に満足しているという。
工事現場で見かけるバンの荷室に、メッシュやパイプで自分が使いやすい棚や収納場所をDIYで作っている職人さんをよく見かける。お施主様によると、この作品の収納エリアにはそのバンと共通する自由度があるのだそうだ。ちょっとした高さの違いで収納量が増えたり工具が取り出しやすくなる。そのようなカスタマイズを自由にできる点が従業員にも好評だという。
従業員や近隣の人を招いてお茶をしたり、麻雀をしたいと夢を語ってくれたお施主様の要望に対して、単に資材置き場とするだけでなく、明るく自由に使うことができる小屋となった。
土地に少しでも余裕がある方は、生活を豊かにする選択肢のひとつとして、“小屋”の設置を考えてみてはいかがだろう。小屋の経験が多く、お施主様の考えや希望を理解し、様々な提案をしてくれる建築家は、とても心強い存在となる。興味が湧いてきた方は、いちど話を聞いてみることをお勧めする。
撮影者:葛島隆之建築設計事務所
間取り図
基本データ
| 作品名 | Hut |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県刈谷市 |
| 敷地面積 | 446.27㎡ |
| 延床面積 | 74.88㎡ |
| 予算 | 1000万円台 |
設計監理:葛島隆之建築設計事務所 葛島隆之
構造設計:小松宏年構造設計事務所 小松宏
設計者情報
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