
広さ、使いやすさ、快適性
リフォームで手に入れた理想の住み心地
目的を持たない空間がゆとりを生む
リビングとキッチンは家族が集まる場所
3LDKだった間取りを1LKへと大胆にチェンジした鎌松さん。リフォームするにあたり、ご自身で考える大きなテーマが3つあった。
第一に「広々とした空間をつくること」。2部屋並んでいた個室の壁を抜き、大きな1部屋の寝室に。無駄な装飾を省き、ベッドを置いてもさらにゆとりがある空間になった。
リビングは、和室と隔てていた壁を取り払い一続きの空間に。もともと壁があった位置には引き戸を配し、来客時などは和室だった一角を独立した部屋としても使用できるようにしている。
余裕を感じる空間づくりの極意は、造作家具のつくりかたにもあるのだという。キッチンからリビングまでの吊り棚、押し入れの扉、引き戸、すべて梁の下までに高さを抑えている。「天井いっぱいまで上げてしまうと、家具ではなくて壁のようになってしまいます。するとすごく圧迫感が出てくるんですよね」と鎌松さん。梁より上はあえて何もない空間に。空いた部分をつくることで、部屋の印象がさらに広々したものに捉えられるという。
詰め込みすぎないことがポイント、と考える鎌松さんらしい空間の使い方が表れているのが以前は和室だったエリアだ。先に述べたように客間として使う以外にも、ソファを壁向きに置いてプロジェクターで映画を見たり、ラグを敷いてお子様のあそび場になったりしている。ここも、つまりは「空間の空き」。はっきりとした目的を持たず、フレキシブルに活用できる空間なのだ。このようにして生まれた空間の余裕が、理屈を知らずとも「広いな」という感覚を伝えるのだろう。
ふたつめは、奥様の「家族が集まるキッチンを」という要望をクリアすること。奥様には、「アメリカに住む妹の家庭のように、ダイニングでお子様が宿題しているのを見ながら料理する」という明確なイメージがあったのだそうだ。
この要望を叶えるため、鎌松さんははじめにキッチンの位置を変更し、部屋の長辺に沿うように設置。そのままキッチントップとシームレスに繋がるデスクを窓際まで延長し、そこが鎌松さんの居場所となった。
さらに、キッチントップと平行に食卓にもなるアイランドカウンターを設置。お子様が大きくなったら、きっとそこで宿題をするようになるだろう。アイランドカウンターは、大人が座っていても背面にある洗面への出入りを邪魔することがなく、また後ろを通って寝室への移動もしやすい位置に配置している。
もちろん使い勝手にもこだわり、キッチントップは熱い鍋が置けるようにステンレスを、またアイランドカウンターは子供と一緒にピザ生地を捏ねたいという奥様の夢をかなえるため、人工大理石を選択。キッチントップを鎌松さんのデスクまで一続きにしたことでデッドスペースがなくなり、必要に応じて調理スペースをより広く取れるようになった。「広いと、材料を出すのも片づけをするのもとにかく楽なんです。私も、この家に引っ越してから料理をするようになったんですよ」と鎌松さんはいう。最初はダイニングテーブルを別に置く予定だったが、今は広々としたリビングと一体になったキッチンで家族皆が食事をしているそうだ。
断熱材と二重サッシで熱が逃げない入らない
エアコンひとつで一年中快適に
マンションであるため、外壁に面した部分にのみ断熱材を入れた。さらに、アルミサッシの手前にもう一列の建具を重ね、二重サッシに。建具のつくりにもこだわりがある。リビング側の窓には、農業では日除けとして昔からポピュラーな素材である「寒冷紗(かんれいしゃ)」を障子に見立てて貼り、ほどよい遮光性を確保。一方、室外機を設置する場所がない故にエアコンが付けられない寝室側は、断熱性を持つツインカーボを窓の素材として採用した。
高い断熱性のおかげで暖かい空気が外に逃げず、足元が冷えることもないそうだ。「18畳を、12畳用のエアコンひとつで賄っています」とのこと。夏は特に外からの熱気が部屋に入るのを防ぐため、エアコンひとつで過ごせるというのだから驚く。
室内は、シナ合板が多用され明るい雰囲気。シナ合板は「木目が美しい」と、鎌松さんのお気に入りの素材なのだそうだ。「自宅ですから、やりたいことを詰め込みました」という鎌松さん。アクセント的に使用されたヘキサゴンタイルや、鎌松さんのデスクに敷かれたファニチャーリノリウムなど、内装素材の実際の使い勝手や使い心地を確かめる意もあったそう。ドアに使用したレバーハンドルや、照明を操作するアメリカンスイッチなど、自宅のリフォームがきっかけとなり後々鎌松さんのスタンダードになっていったものも多いとのこと。まさに、この家には鎌松さんの原点が詰まっているといえよう。
使いやすさも人それぞれ
生活スタイルにマッチした機能性を追求する
エコという観点も当然あるが、それ以外にも意味はある。例えば欄間に使用したガラスも壊される家からいただいてきたものだが、現在ではもうつくれない貴重なものなのだそう。そこにあるものを見て判断し、どう転用するかを考えられる。それが建築家の力の1つなのではないかと鎌松さんは言う。
古材を再利用するのは外からもらってきたものだけではない。玄関正面のパネルや寝室の仏間に利用した木材は、リフォーム時に取り払った壁の下地材だったという。また、キッチンのシナ合板など今シンプルな使い方をしている素材は、この家が手放され取り壊されるときに、誰かに再利用してほしいと願っているそうだ。
リフォーム後の鎌松邸はシンプルな中に外国を感じるような雰囲気もあり、どこを切り取っても絵になると感じた。しかし鎌松さんは見栄えはもちろん重要ですが、と前置きしたうえで「作品ではなくて、住まいをつくっているのですから、写真に写らない使いやすさこそが大切です」と話す。住む人が好む雰囲気づくりをしながら、その人の生活スタイルを正しく把握し家の機能に反映させる。見えない部分、写真に写らない使い勝手の部分こそ重要視すべきという。
「生活スタイルは人によって全く違うものです。空間の見栄えと、生活スタイルがきちんとマッチしていることが大事なんですね。表面的な家づくりではなく、お施主様ひとりひとりに合わせて家づくりができるのが、建築士にご依頼していただくメリットであり醍醐味だと思います」
間取り図
基本データ
| 所在地 | 東京都江東区 |
|---|---|
| 敷地面積 | 72㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども1人 |
| 予算 | 〜2000万円台 |
| 施主 | K邸 |
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設計者情報
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