
密集地×狭小地でも抜群の開放感。
大人が憩える、土間と吹抜けのある家
BATTIRI DESIGN G.K. (バッチリデザイン合同会社)
「LDK」という概念に縛られない発想と、
土間&吹抜けで1階を心地よく
ところが意外にも、Fさまが最も長い時間を過ごすのは眺めのよい上階ではなく、1階なのだという。
「2階・3階も居心地がいいですが、料理が好きなので1階のキッチンまわりにいることが多いんです。キッチンは天井高4m以上の吹抜けのダイニングに面し、開放感たっぷり。特に、ハイサイド窓から明るい朝日が入る朝食時は、すごく気持ちがいいです」とFさま。
吹抜けのダイニングの横に広がる、本やオブジェが並ぶラウンジも魅力的な空間だ。このラウンジはペレットストーブを置くためにつくった土間ともつながっており、冬はストーブの炎に癒されながらくつろいだひとときを過ごせる。
ここであらためて1階を見まわすと、リビングがないことに気づく。
聞けば、Fさまは1階にLDKがある家をリクエストし、土間や駐車場も希望。しかし金刺さんは23坪の敷地で全てを1階に詰め込むと窮屈になると考え、LDKという概念に縛られず、キッチン・ダイニングからリビングを切り離して2階に配置することを提案。2人のお子さまは成人していらっしゃるため、「大人3人なら、くつろげる場所をあちこちに設けたほうがいい」と、リビングの移動で生まれた1階の余白部分をラウンジにしたのだという。
確かにこのラウンジは、リビングにするには小さめだが、ちょっとしたくつろぎスペースにはぴったりの広さ。読書を楽しんだりおもてなし空間に使ったりと大活躍で、Fさまも大のお気に入りだそう。「家族全員このスペースが大好きで、ラウンジのリクライニングソファが取り合いになるほど(笑)。提案していただいて本当によかったです」
開放感、動線、プライバシー確保。
造作収納1つで快適空間を実現
横への広がりだけでなく、ダイニングにいると吹抜けやオープンな階段を介して上へ上へと続く空間ののびやかさも感じられ、気持ちまでおおらかに。壁や天井は珪藻土、床はオーク材と、素材感のある内装もナチュラルな上質感があり、Fさまがついつい1階で過ごしてしまうというのもうなずける。
とはいえ単に広いだけの空間は所在なく感じることもあるし、玄関を開けたとたんに1階全体が見えてしまうのも避けたいところだ。そこで金刺さんは土間と垂直になった造作収納を設けて住空間を仕切り、玄関側にパントリー、奥にラウンジをレイアウト。ダイニングやキッチンにつながる2つの動線をつくった。
ホームパーティーが大好きなFさまは、この動線を大絶賛。「お客さまはラウンジ側から上がっていただき、そのままダイニングへ。日常の買い物帰りは、造作収納の手前のパントリー側から上がって直接キッチンへ行けるので便利です」
この造作収納は目隠しの役割も果たし、玄関から1階が丸見えにならないというメリットも。シンプルな収納1つで、開放感を保ちつつ動線の利便性やプライバシー確保もかなえた金指さんの手腕は「見事」の一言に尽きる。
土地の個性を見極め、
豊かな想像力と設計力で理想の家に
「開放感があって住み心地がいいですし、調質効果のある断熱材のおかげでどの場所も年中快適。私は本当に、この家が好きですね」と満面の笑みで話すFさま。なぜ金刺さんに設計を託したのか聞いてみると、Fさまは建築関係の会社に勤めていたことがあり、金刺さんの仕事ぶりを知っていたのだという。
「いろいろな建築家の方の家づくりを拝見してきましたが、金刺さんはのびのびとした魅力的なプランが多く、コミュニケーションも丁寧。金刺さんがつくった家を見せたら子どもたちもファンになり、お願いすることにしました」
その期待に応え、建物に囲まれた狭小地への懸念を鮮やかに吹き飛ばした金刺さん。F邸の設計を振り返り、「どんな土地も必ず個性があり、3次元で空間を捉えれば何かしらポテンシャルがあるものです。そこをうまく引き出すのが我々の仕事。簡単にあきらめず、相談していただきたいと思います」と話す。
さらに、「建築家というのは、制約が多いほうが燃えるというか、やる気になったりもするんですよ(笑)」とも。気負いのないざっくばらんな印象の金刺さんだが、施主のためにいいものをつくるプロ意識はとても高い。この人なら、どんな条件でも素敵な家をつくるのだろうと思えた瞬間だった。
基本データ
| 所在地 | 神奈川県横浜市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 79.08㎡ |
| 延床面積 | 115.8㎡ |
| 家族構成 | 母+子ども2人 |
| 予算 | 3000万円台 |
| 施主 | F邸 |
撮影:Atsushi ISHIDA
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

あえてのセオリー破りが叶えた 光が降り注ぎ、風が通り抜ける家
南北に長く南北からしか有効な採光が望めない土地においては、南面にリビングなどの主要な部屋を、北側に水回りや個室を置くのが一般的。そんなセオリーを打ち破り、LDKを南北に貫通させるというゾーニングで、光が降り注ぎ風も通り抜ける家をつくったのは、自然環境を巧みに取り入れた家づくりを行う建築家、TAWs DESIGNの田辺さんでした。

庭の心地よさを取り込んだ、リビングが暮らしの中心にある平屋
奥様の実家でもある築100余年の家を大切に守り、暮らしてきたSさんご夫婦。ご子息が巣立ち、夫婦二人のこれからの暮らしや耐震性への不安を考慮して、建て替えることにしました。Sさんご夫婦のリクエストは心地よく暮らせる平屋。石川さんが提案したSさんの住まいの工夫をご紹介します。

憩いの時間を豊かにする空間と洗練デザイン 人が集まり笑顔が満ちる「人生を楽しむ家」
施主さまが望んでいたのは「訪れた人にとっても居心地がよく、出会いと交流をはぐくむような家」。その思いを形にしたのは、建築家の水間寿明さん。楽しい時間を過ごしてホッとくつろぎ、英気を養う。そんなバカンスのような暮らしがかなう住宅の魅力とは?

素材も間取りも理想を現実にした、納得と愛着の家づくりとは?
無垢のフローリングに漆喰の壁、天井まで届く南向きの大きな窓。東京の下町にあるKさん邸は、周囲を住宅に囲まれているとは思えないほど開放的で明るいお住まいです。家族が一番長い時間、一緒に過ごすリビングを中心に考え、さまざまな工夫でコストを抑えながら、希望どおりのマイホームをつくりあげました。

3つのテントを備えた、行き止まりない空間 キャンプを楽しむように住まう家
関東から岡山県へ移住、家を新築することにしたお施主さま。建築家の尾山さんはキャンプを通じてこの土地を気に入ったというお施主さまのために、まるで大きな樹の下にテントを張った風景のような空間を家の中につくり出した。雑多なものがしっくりと収まり、暮らしを楽しめる家はどのように叶えられたのだろうか。

築40年の家が北欧風のモダンな空間に!フルリノベで実現した4世代の家
ご両親との同居をきっかけに、築40年の実家をフルリノベーションすることとなったMさんご夫婦。新たに誕生したのは、光と風をうまく取り込んだ、心地よい住まいでした。家族全員がのびのびと暮らせる工夫に満ちた、4世代のための住まいづくりに迫ります。

依頼主の心に散らばる要望を形に! 空室を作らない賃貸併用住宅
東京の下町の空気を残し、今若者にも人気のスポット「谷根千」。谷中、根津、千駄木、木造家屋とお寺が密集する、かつての寺町はいまや観光客で賑わう。そこに漂う昭和の空気を求め、週末になると多くの人が訪れる。そんな、日本の古きよき面影を残した街に、シックな黒壁とそこに木が浮き上がる特徴的なデザインの賃貸併用住宅が1棟ある。街の空気を壊すことなく、でも遠目にも目立つこのデザインには理由があった。

パノラミックな田園風景の継承と 家族の安心を支える三角平面・大屋根の家
滋賀県栗東市に、独創的な作品が誕生した。前面道路側に象徴的な境界壁を持ち、建物は敷地を対角線に横切る三角形。それ以外は広大な庭とウッドデッキとなっている。 “子どもが安全に過ごせる”ことと、“パノラミックな田園風景を暮らしの中に取り込む”ことを両立した、工夫に満ちあふれるこの作品をご紹介しよう。

建築家と共に楽しんだ家づくりで 家族一緒も個々も愉しい居場所がたくさん
家族が一緒に過ごす空間も、個々過ごす居場所も愉しみたい。そんな想いを託されたのが、実績豊富な建築家・松本直子さん。薪ストーブ、造作キッチン、そしてセカンドリビング。施主夫婦のアイデアが随所に息づく住まいは、濃密な対話から生まれた。 だが、このプロジェクトの真髄はそこだけではない。 実は今回取材した施主世帯に加え、母と妹が住むもう1棟を同時に建築。さらに、各棟に賃貸スペースを有する、極めて難易度の高い計画。家族の絆と賃貸経営を両立させた壮大な挑戦に迫る。






